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パスト ライブス/再会のsoopenのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.8
PAST LIVES…前世、過去世。
本作は前世からの『縁』がテーマだったものの、美しく儚いロマンスを、餅のように細く長く伸ばして伸ばして24年…そんなに忘れずに思い続けることが可能なのか⁈という驚きの男の純情と、女のリアリティを感じた作品でした。

ソウルで幼馴染として育った少女ノラと少年ヘソン。恋心が芽生え始めた頃、ノラはカナダへ移住。そっけなく別れを告げ合う2人が、再会を果たしたのが12年後。NYへさらなる移住を果たし、作家としての道を着実に歩む野心家のノラ。対して普通にソウルで会社員として働くヘソン。2人はオンラインで再会を祝し、交流を深めていく。しかし会うことは敵わず、更に12年の月日が流れ…
ノラには成功した自分と理解ある優しい夫が。そこへ訪れたのは、彼女を想い続け未だに独身のヘソン。1人の女対2人の男。果たしてこの恋はどうなるのか?









以下ネタバレ感想です!
再会後のたった7日間。これを美しい過去のロマンスへの郷愁と、来世へ縁を繋ぐ希望と捉えるのか?私は現実的で自分が一番大事なノラが、キッパリ別れを告げたことにとても意味があると思いました。いつまでも忘れられない人がいる、でも私は先に進まねば!という強い意志が感じられました。だから、ヘソンがやってくるのを拒むべきだった。そこは女なんだなぁ。自分のことを24年も想い続ける男を突き放せなかった。
理解ある優しい夫にも甘えて、終始夫が気の毒でした。(夫の方が作家として成功してそうなのに)
ヘソンもそんなに忘れられないなら、12年後の再会で会いに行けば良かった。

ただこの映画で心に残るのは、ノラのセリフ。夫にヘソンのことを(正しく覚えてはいないのですが)こう説明します。
『あの人は典型的な韓国の男なのよ。親元を離れて暮らすことも出来ずに未だに実家で同居している…』(韓国の賃貸事情を考えれば已むなしですが…)
愛情は感じているが、”私はもうあちらの世界には戻れない”そう聞こえるような言い方でした。どうやって生きていくか?2人の価値観が一致していても、アメリカでは自由に暮らせるノラが、韓国では窒息してしまうかも知れない。
ヘソンにも結婚を考える相手がいたけれど、”自分のスペックでは相手を幸せに出来ないと思って距離を置いた”と語る様子にも、現代韓国で、若者が結婚生活を送るのがいかに大変かを物語っている。
自分に自信のないヘソンと、自分は間男かも…と不安に思っているユダヤ人の夫。どちらにも愛されるノラ。大人の現実的な恋愛を、前世や来世という夢のある言葉で包み、美しい映像で描いてみせた監督の手腕には、新しいものを感じました。

個人的にはユテオには流暢な英語で堂々と喋って欲しかったです。
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