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モガディシュ 脱出までの14日間のsoopenのレビュー・感想・評価

4.1
1988年から始まった、ソマリア内戦の最中に、韓国と北朝鮮大使館は、国連に加盟する為、投票権を持つアフリカ諸国へのロビー活動で、互いに牽制し合う。バーレ大統領にこれでもかと媚を売ろうとする両国の思惑をよそに、激化する内戦。各国の大使館は閉鎖を決め、本国へ帰ろうとする。街では反政府勢力が豊富な武器を使用して、所構わず機関銃をぶっ放し、敵とみなした瞬間に撃ち殺す、外出も難しく、食糧他金目のものも全て奪い尽くされる有様。北朝鮮大使館は味方と思われたソマリア兵に奪い尽くされ、着のみ着のまま追い出され、熟考の末、韓国大使館に助けを求める。本国への通信手段を断たれた両者は、お互いの情報網やコネクションを使って、助け合わなければ、脱出を図る事は不可能だった。韓国大使の英断で韓国大使館に引き入れられた、北朝鮮の同胞家族。互いにぎこちない関係から、不思議な連帯感を生み出し、目的のために協力し合う。知略と勇気と運に頼るしかない、異国の地で一体彼らはどう動くのか?そしてこの国に何を見て帰るのか…

2度鑑賞しました。衝撃的な映画でしたが、ものすごくリアルに感じました。映画では、韓国と北朝鮮の異例の協力体制に焦点が置かれていたので、ソマリア内戦については、大統領や政府の汚職による、貧富の格差で我慢できなくなった国民が立ち上がったが、モガディシュでは、正規軍が銃により反抗的な民衆を撃ち殺し続けたので、激化し、街は焦土と化した、程度しか分かりませんでした。

それでも、アフリカ最貧国でありながら、何故反政府軍は豊富な武器を持つのか?それは無償で供与する国があるから。
アフリカの角と呼ばれる交通の要衝にあるソマリアは、ヨーロッパがこぞって植民地支配を望んで取り合いを繰り返した地域。イギリス、イタリアに分割統治されたソマリランドを、バーレ大統領が民族統一をスローガンにクーデターを起こしたものの、エチオピアなどの他国の介入により、戦争に負け貧窮化。それでもバーレは自国の一部の氏族を優遇し、首都モガディシュのみに富を集める。地方氏族達との格差による断絶は当然不満を生む…このような背景(複雑な話をザックリ調べただけですが)があり、長引く旱魃による農作物の不作も相まって、現政権打倒に立ち上がる市民達の構図があったようです。

映画の中では、10歳程度の子供達でも、笑いながら敵味方の判断もせずおもちゃのように、銃を乱射し、人殺しを何とも思わない様子に胸を刺されました。政府側でもない民間人も撃ち殺され、累々と転がる死体に、砂埃で曇る視界の中、命懸けの逃避行をする、韓国と北朝鮮の車は、ボコボコにされながら、遺体を踏み越えながら、助力を受け入れてくれた先へ移動する。そのハラハラドキドキするシーンが最もリアルに感じたのは、僅かな距離の走行なのに、ゆっくりとしか走行できなかったことです。

韓国側の大使のキムユンソク、北朝鮮側の大使のホジュノ、この2人はとても冷静に、公平に判断するタイプで、逆に短気で喧嘩っ早いのが北朝鮮側参事官のクギョファン、韓国側参事官のチョインソンでした。それぞれに欠かせない大役を務めたと思います。
実話ベースなので、観終わって、ああすっきり!という作品ではありませんが、必ず心に残る作品だと思うので、未視聴の方にはお勧めしたいです。
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