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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のsoopenのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.2
墓場鬼太郎から始まったゲゲゲの鬼太郎シリーズの親世代の話。
なるほど、鬼太郎が墓場から生まれるのには、こんな壮大で哀しくも美しい生誕秘話があったのね…

昭和31年、戦後の復興で馬車馬のように人々が働いていた時代、血液銀行に勤める水木という男も、野心を持って危険な取引のために、哭倉村という山間の閉鎖的な村に出向く。そこでは龍賀一族の当主、時貞の後継争いが始まっていた。謎に満ちた一族の血生臭い過去、あらゆるものを犠牲にして、日本国の立て直しを狙う建前で、目論んでいる浅ましい計画により、犠牲になる人々、妖怪、幽霊族…怨念に満ち満ちたこの土地で繰り広げられる殺人事件。それはあやかしの力なのか、人間によるものなのか?巻き込まれた水木と、妻を探しにきたという幽霊族のゲゲ郎はどうなるのか…

という横溝正史ミステリーに、ファンタジー味付けがされた、紛れもない水木ワールドでした。
作中登場する水木という男は、水木先生がモデルに違いなく、彼の太平洋戦争での南方での戦いの描写には、胸を打つものがありました。実際、戦争だろうがそうでなかろうが、卑怯な狂った人間はいて、犠牲になる人間もいる…でもそれは戦争という避けられない事態によって、より顕在化される人間の本性なのかも知れない。そんな中で生き残っても、強い虚無感が残るだけ…
水木、という男にはとてつもない重い枷を嵌めたキャラクター像を、また妻に恋焦がれて探し続ける純粋な男、ゲゲ郎には優しさと強さと自己犠牲も辞さない、理想の人間像を持たせて、この2人を出会わせることにより生まれ出る友情を描いた作品でもある気がしました。
ラストはなるほど納得、鬼太郎と目玉おやじも登場し、安定感のあるあのアニメに繋がっていく流れが美しかったです。鬼太郎を見たことのない人でも楽しめる作品になっているので、未見の方はぜひ!
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