母親を病気で亡くして以来一人で暮らす12歳の少女で、役所には叔父と暮らしていると偽りながら自転車盗みで日銭を稼いで暮らすジョージ―。真実を知るのは親友のアリだけという日々の中で気丈に振る舞う彼女が、父親を名乗るジェイソンの突然の訪問に驚き、かつて自分達を捨てた彼とのわだかまりを解いていく様を描くドラマ映画です。
数多くのミュージックビデオを手掛けた後に三本の短編映画を制作していずれも好評を得たイギリス人女性監督シャーロット・リーガンの長編映画デビュー作となる2023年公開作品で、父娘を演じたハリス・ディキンソンと本作でスクリーンデビューのローラ・キャンベルの演技と繊細な物語がサンダンス映画祭などで高い評価を獲得しました。
壊れてしまった関係を修復していく親子の物語自体は古今東西に多くあるもので新鮮さはありませんが、主体のそばから離れない温かみのあるカメラワークとお話運びで父娘の再生を捉えます。題材に対する掘り下げであったりテーマへの昇華に不足感はあっても裏を返せば実直とも言え、好感の持てる不器用な二人を応援したくなる一作です。