たく

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のたくのレビュー・感想・評価

4.5
戦場リアリティ。
命がけでこの映像を届けた監督の意気込みが伝わる。
電波も通信も日に日に遮断されていく中、決死の覚悟でこの映像を世界に発信したチェリノフ監督。どんな賞よりも偉業だと思う。

『戦争は静寂から始まる』という冒頭の言葉通り、マリウポリはロシア国境に近い港湾都市で、普通に市民が暮らし、お店や街のインフラだって普通に機能していたのがわかる。

やがて絶え間なく航空機の音が聞こえ、遠くで爆発音が聞こえ、インフラが途絶え、身近に爆弾が落とされ人が命を失う。この様がたった20日間で徐々に悪化していく様が恐ろしかった。

地震や台風のような災害時もそうだが、最初は揺れた、雨風が凄い、という印象からそこから続くインフラの断絶だったり、人命の救助だったり事が深刻化していくが、これが恐ろしくも人間の手により行われている。
これを国際犯罪以外のなんと言えるのか。

戦争という大義名分は人類の歴史で色々あり、時にそれは正当化されてきただろうが、ことこの映画に映る市民たちを見ると、ただただ恐怖と憎悪しか生まない。彼らにとって戦争が生活の一部という事が、非常に悲しい。

そんな中、唯一の希望と言っては言葉違いかもしれないが、彼らはウクライナ人としてウクライナで生きたい、という事。プライドだけは人間らしく保っているのは誇らしい。
たく

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