たく

人間の境界のたくのレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
5.0
先週観た『マリウポリの20日間』につながるような重い映画だった。
2021年が舞台だからマリウポリの約1年前に起きていた出来事と考えると、近年、世界は実に人道危機が激しいと考えられる。

シリアからの難民家族、国境警備隊の男とその妻、人道支援を行う人たちとそれに合流した女性のおよそ三視点で語られるストーリーも、若干人道支援の人たちの話が長いかと思うが、3部作的な内容ではなく、後半は交互に出てくる感じで巧くできていた。

難民を受け入れる、という上で国や自らの生活など、色々な状況や守るべきもの、建前など存在するだろうが、この映画で一番強く感じたのは、人間と人間が見つめ合ったとき、何を感じるかという事だ。
それはある意味、人間としての希望であるが、人間と人間として向き合えない惨さも描かれていた。


非常に辛いシーンも多かったが、最後の方で難民支援する一家に受け入れられたアフリカ系の少年たち(おそらくコンゴ民主共和国から来たのかと推測)と、兄妹がラップで一つになる光景は感動した。人間と言うものは絶望も作り得るし、希望も作り得る存在なのだなとひしひしと感じた。

こういう映画が作られない世界を願うが、こういう映画を発信してくれることにも感謝。
たく

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