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アートカレッジ 1994のnekokatzのレビュー・感想・評価

アートカレッジ 1994(2023年製作の映画)
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最近の映画記録、TIFFの9日目にみた「アートカレッジ 1994」のこと。アニメーション部門の一本で、中国映画。

「ハブ ア ナイス デイ」のリウ・ジエン監督の新作で、同じくロトスコープ作品である。
けっこう映像としてセンス良い面もありつつ、ロトスコの粗もある印象。

舞台は南方芸術学院という美術大学。このモデルは江蘇省南京市の南京芸術大学であろう。

主人公シャオジュンと、寮で同室の通称ウサギのコンビ。シャオジュンは墨彩の中国画専攻。ウサギは24歳と年長で、専攻は油彩か洋画。美大生の日常が描かれる。
大学内には、入試に落ちた癖に授業に出たりウロウロしているヤツも。
シャオジュンたちは、音楽科のピアノ専攻のリーリー、声楽のガオポンという女子コンビと出会い…という展開。

映像は構図やポーズなどはなかなかよく出来ている。センスは悪くないです。
当時の建物や街並みはもうないはずなので、昔の写真から起こしたBGや、古い建物で撮った実写などを組み合わせているのだろう。

ただ、止めのロングショットやバストショットは良いのだが、画面内で足の接地が動くショットで、ロトスコがボロボロになってしまう。
まあこれは「ハブ ア ナイス デイ」でもそうだった。「惡の華」のようにはいかないですね。

物語は、シャオジュンは墨彩で伝統的な手法を嫌うが、教授からは窘められ…。リーリーは田舎の親から嫁入りを勧められ…など、それぞれに転機が訪れる。

以下余談。この映画、冒頭の2カット目に、カブトムシを映した長回しのショットがある。
甲虫は石垣を登ろうとして落ち、また登っては落ち、裏返ってあがく。この冒頭シーンが本編のメタファーになっている。
こういう点も含めとても映画的で、監督のセンスを感じる。
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