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夜明けのすべてのmiuのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
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ひとの、じぶんのよわさを知るとそれに気づけるようになるし、一見よわくなっているようにみえてそれはすごくつよくなっているということ。
みんなどこか足りなくて、そのことをお互いが理解してこんな風に補っていけたらどれだけいいだろうと思った。AIにはつとまらないやさしさや心配り。すべてを分かることはできないけれど、せめてその時にお茶を差し出したり少し風の通る場所に連れて行ったり、ただそばにいてみたり。踏み込んだり踏み込まなかったり。そんな風にしてひだまりと陰のなかを過ごしていけたら。だれかの状態を“ある”として受け入れることができたら。
そしてその“ある”を知ってくれてる人がいることは心の居場所になるって思い出す時間だったな。
ねているおっちゃんや議論がヒートアップしてる様子を笑って見守ったりしているところがなにげなくあって、みんな人間関係こうなればもっと良いよねってほほえみながらみていた。
自助グループ、デイサービスとか福祉の視点も入っていて生きるって福祉なんだよなと。福祉の本来の言葉の意味は、「幸せ」や「豊かさ」なんだよね。幸せになるために生きてるってなんとなく思えたらいいなー、全人類。
夜明け前がいちばん暗い。夜があるから朝があって、朝があるから夜があって。明けない夜はないというけれどその夜がつづいてほしいと願う人もいて。いまだに暗闇と静寂が好きだけれど、特に取り憑かれていたじぶんのそんな時期のことも振り返っていた。電車でわけもなく涙が流れたり、なにがしたいのか自分がどんな人間なのかまったくわからないアイデンティティの崩壊みたいな日も決して無駄じゃなかったなって。まあなんとかなる、と思えるのはそういう日があったから。みんなちょっとずつとなりの人にやさしくなれたらいいよね。
冒頭うなだれて雨に打たれていたのが、最後雨を浴びて空を見上げる彼女に光がこれからも降り注いでほしいと願った。生きていればいろんなことがあって、じぶんではどうしようもないこともあるけれど、生きてきた時間に救われることが多分これからもあるから。暗がりでしかみえない星があること、ちゃんと忘れないでいたいな。
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