ヒゲ人類

カンダハル 突破せよのヒゲ人類のレビュー・感想・評価

カンダハル 突破せよ(2023年製作の映画)
4.8
素晴らしい!安定感がありました!ありがとうございます!

ここのところ観た映画(オペレーション・フォーチュンやジョン・ウィック・コンセクエンス、ドミノ、ザ・クリエイターなど)はどれもいわばある程度奇を衒う要素があったわけで、それらが新しい試みなのは間違いないのだろうが個人的にハマらなくて奇を衒った様に映って鼻持ちならない部分を多少の違いはあれど感じ取ってしまっていたのだが、これは王道でしっかりと「映画を観た!」と言う満足感をくれた。
シンプルなストーリーが功を奏して最初から最後まできちんとハラハラドキドキピリピリサクサクゴリゴリバチバチ、久しぶりに良い意味で鑑賞疲れに浸れることができた。

元々エネミー・ラインやブラックホーク・ダウンの様に絶望的な戦地で地獄の撤退戦を強いられる系が好きなのもあるが、それ系だからと言って両手離しで涎を垂れ流すわけではない。面白くなくては意味がないわけで今作は持続する緊張感と鑑賞者が欲しがっている絶妙なラインのリアリティで畳み掛けてくれた事こそが肝要なわけである。
各勢力の構図がごちゃついている様に感じられる上に国際武装集団がいちいちそんな簡単に動くわけねーだろとか、あんな広大な範囲をバイクで捜索するとかまじでバカでしょとか、そう言う事は考えなくて良いんです。映画的に最高に面白くなるリアリティラインで良いんです。この作品はそこが絶妙なんです。個人的にはですけど。

あとは役者がみんな良い。
ジェラルド・バトラーは本来言うまでもなくなのだけれど、ただの野蛮な危ないバイオレンスオヤジ役もできれば粗暴な中にきちんと知性が包括される今作の様な役もできるし何よりやっぱりカッコいい。顔が体が動きがカッコいい。痺れるし危機が似合う。
ローマン役のトラヴィス・フィメルもただ危ないだけじゃなくて情に熱い部分があるあの役をあの顔が箔付けしてるわけだ。
初登場の下りはただの悪い顔だったのが笑顔の可愛いワイルド兄さんになってしまうしあの眼のカラーはシベリアンハスキー的なチャームを有している。
モハメド役のナヴィド・ネガーバンは劇中ふとした拍子にショーン・コネリーっぽく見える品のある顔立ちで、これが芯のある役柄にマッチしていて物語に深みを与えている(ように感じる)。
カヒル役のアリ・ファザル。濃いですね。実に濃いですね。しかし軽薄な性格とマッチする顔。そして体型が最高にカッコいい。頭が小さくて手足長くてスラッとしている。彼じゃなきゃバイクで砂漠をかっ飛ぶなんていうアホなシークエンスは画にならなくてどうしようもなかった事でしょう。

シリアスでぎりぎりの消耗戦が好物な人は「良くあるくそだせえキャッチコピーのくそだせえ日本版ポスターアート」に惑わされず劇場で観ておく事を強くお勧めする。
しつこい様だが映画を観た!と言う満足感が得られる事でしょう。
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