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碁盤斬りのmayumayuのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
3.8
見に行くまで知らなかったが、落語の「柳田格之進」を基にした映画だそうだ。

彦根藩を讒言により追い出され浪人の身となり、一人娘の絹と長屋で貧乏暮らし。
碁が得意な格之進は裕福な商人萬屋源兵衛と知己となり、碁を共に打つ日々。
ある夜宴に招かれた際に、萬屋から50両がなくなり番頭・手代から嫌疑を受ける。さらに、時を同じくして彦根藩で格之進を陥れた仇が判明し、絹の自己犠牲を受け入れつつ敵討ちの旅に出る。そして。

草彅剛は憑依型の俳優さんなのかなといつも思う。
バラエティで見せるとぼけた姿とは打って変わり、やさしく真面目な人からヤクザまで。すっかりなりきっているようにいつも見える。
真面目な格之進。普段の穏やかな表情とは打って変わった敵討の旅で追う時の妄執にも近いような鋭い眼光。激情。
清原果耶は好きな女優さんだが、健気な武家の娘を演じたらピカイチなのでは。
NHKの蛍草、での彼女を思い出した。
小泉今日子が懐深い吉原の女将の役。清原伽耶との絡みがとてもよかった。
中川大志。初めてみたのは大河ドラマ。豊臣秀頼を演じていて、あまりのきらきらしい輝きに驚いたものだ。この映画でも若々しさが良かった。
國村隼。流石。懐の深さ、旦那としての重み、コミカルさもあり。
斎藤工、この映画ではめっちゃ悪役ー!!
市村正親の親分さんもかっこよかったな。
概ね満足だったのだが、落語っぽいなーと思うところと、ちょっと?なところとあり、ネタバレになるので行間開けて書きます。









弥吉はお絹さんが吉原にいることは知ってたけど、大晦日が期限なのは知らないと思うのですが、なぜお金を持って大晦日の除夜の鐘の中吉原の大門へ走り、格之進と会うことができたのか。
最後にお金が出てきて格之進への濡れ衣が明らかとなり、約束通り首を貰い受けると乗り込む格之進の前でお互い譲り合う源兵衛さんと弥吉の様子はザ・落語な感じだった。
斎藤工演じる侍のやっていることが相当下衆であり、草彅剛の格之進の怒りの感情が凄まじかったため、最後の落語らしい大団円とのギャップがあり、素直につながると思えなかった。あんなに格之進怒ってて、お絹さんだって弥吉にあんなに怒ってて、それではい、元通り仲良くしましょうってそんな簡単になれる??

ちょっと映画館出た後はそのへんだけ違和感だったのだが、帰宅しながら古今亭志ん朝の「柳田格之進」をYouTubeで鑑賞。(便利な世の中です)
脚本よく練ってあるのに感心した。斎藤工演じる侍のエピソードは落語ではそっくり無いのだ。お絹さんの吉原での大晦日までの期限もない。
落語の格之進はよりほんわかしているが、映画の格之進はやっぱりあの鬼気迫る激情を抱く理由がある格之進なんだな‥
「期限なんててありました?ほらお迎えですよ」と言うきっぷの良い女将に、お絹とともに涙しちゃいましたけど、これも映画のみのエピソード。
そして、落語だと「不思議なもんで、萬屋と柳田家の絆はこの後より強くなりました」みたいなことを落語家さんが言うと、ああ、そうかあ、そんなこともあるかねえってなんか思えてしまうのですよね。落語家さんすごい。だから、映画もあの大団円だったのね。
と落語を聞いて自分なりに納得してみました。
草彅剛が、パンフレットで「格之進は一両も無駄にしちゃうし、お絹に苦労させちゃうし、あまり共感はできない」と言っていて、私もそう思うなあと。
江戸時代の武家の考えかたはかっこいいがなかなかに堅苦しく時に人に犠牲を強いることも当然としてしまうものだったのかな。
しかし、格之進なかなかの手練れだし、目利きもできるし、碁も強いし、かっこいい😎
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