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かがみの孤城のmayumayuのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
4.4
良かった。
見終わった後がすごく爽やか。

キャラクターデザインがいわゆる女の子の顔が髪や服を取ると同じ顔になりがちな造形に見えて、劇場鑑賞をスルーしていました。でも、フィルマの評判通り、良作でした。映画を作った人たちに敬意を表するし、そのために劇場鑑賞すれば良かった。

学校での居場所をなくした主人公のこころが導かれたのは鏡を通り抜けるとある美しい孤城。そこにはオオカミさまと言う少女と他に6人の中学生がいて‥
ところどころで涙ぐんだり、涙が出たりしました。それは、母の気持ちだったり、中学生の登場人物の気持ちだったり、両方だった自分を見つけました。
見終わった後原作の文庫本を近所の本屋さんで買って一気読みしました。そして今日もう一度見た。当直明けだから中盤寝てしまったけど、ああ、ここでこころはこう思っていたな、とか小説の空気で映画を補完しながら、また涙が出ました。

不登校はないけど、外し、にあったことはある。それは長らく自分の奥底にあって、時々自信を失わせたり、不安を掻き立てられたりする記憶になったし、なかなか人を用心深く信用しない傾向の原因になった。一つ目の扉は軽く開くけど、二つ目の扉は容易には開けない。心を開かない。当時も自分でそれを自覚していた。結構長く長く。高校生、大学生になっても。働いて社会人になっても。
でも、娘を産んでいつの間にか超えている自分に気づいた。考える中心が自分じゃなくなって、しかも大変で、夢中で、可愛くて、そんな記憶が忍び寄る隙が自分の中になくなっていたんだと思う。
今回この映画を見ても、若かりし頃のその記憶を思い出したのはだいぶ後だった。だからやはりもう超えてたんだな、と、思う。

いじめは本人が何も悪いことをしていなくても起こる。それはまるで事故に遭うようなものだと私は思う。
娘には時々伝える。学校という小さな世界が全てだなんて思わないでほしい。世界はもっと広い。そこの中だけでの価値観なんて、外から見たらちっぽけなものだ。例えば、五年経ったらたぶんそこでの価値観に縛られていたことなんて、もう、遥か後ろにあるものだ。学校の集団生活でしか体験できないことや思い出もあるだろうから、学校が悪いって訳じゃない。でも、もし合わなかったら。辛かったら。他にもいくらでも道はあるから。

私が経験したことなんて、この映画の中学生たちが経験したことや、今この瞬間苦しんでいる子たちからしたらとても軽いものだったと思うけれど、それでもその経験は長く長く影を落とす。
この物語は辛いことを抱えて生きていく子たちへのエールのように思えたし、私はそれに心から賛同する。
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