やさい生活

ヴァチカンのエクソシストのやさい生活のレビュー・感想・評価

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
4.1
ヴァチクソがアマプラに来たぞー!
『エクソシスト』や『コンスタンティン』系列のクラシックな悪魔ホラー好きは楽しめる。

暴れまくる青年と暗い部屋にベッド、やたら勢いが良すぎる血しぶきが「王道」すぎて悪魔祓いはこうでなくっちゃな〜?!と思わせる冒頭の掴みからもう良かった。そのまま古風な作りで行くのかと思いきや軽快な80sロックを合わせてくる演出もアモルト神父のような茶目っ気がある。

事件の舞台、いわく付きのサン・セバスチャン修道院に住むことになったアメリカ人一家(ここで英語の必要性をこじつけている気もする)が騒動に巻き込まれる。普通のホラーだと最初にやられるのは絶賛反抗期の長女エイミーだと思うが、ラスボス悪魔が取り憑いたのは弟のヘンリー。悪魔祓いホラーだと心に傷を負っている子供が狙われがち。

中盤のミステリー展開も面白い。事件の場所がわざわざスペインなのを不思議に思いながら見ていると、最後にきっちり回収されていた。スペイン異端審問や性暴力などカトリックの暗部に刺さる内容だったが、あれはキリスト教徒的にはどうだったんだろう……。作中でアモルト神父やイスキベル神父だけでなく聖職者でないジュリアやエイミーも主の祈りを必死で唱えていたので、なにかの時の為に一節でも覚えた方がいいのかなと思ったりした。そもそも悪魔って非キリスト教徒に取り憑くんだろうか。無宗教なのでいまいち感覚が分からない部分もあるが、劇中で幾度か出てきた告白という習わしは宗教が人間の救いとしての役割を果たすと共に、実際に心理的負担を減らす実践的な手段だと思う。アモルト神父は戦争経験を経て(もしかしたらそれがきっかけで)聖職者となり、イスキベル神父にも愛する人に対する葛藤と罪悪感がある。赤い小鳥は罪悪感の象徴。この2人のバックグラウンドも味があるなー。

上記の告白のシーンや「悪魔祓いの98%は精神疾患」というアモルト神父の言、最終的に祈りで鎮めるところ含め、全体的には至って王道で真面目な悪魔祓いホラーだったという感想。ポスターのインパクトからもっとパワー系な感じなのかと思っていた。ドアは蹴破りまくっていたが。

余談だが、洗面台が割れるほど頭部を打ち付けてそのあと平気で喋ってるジュリアママ強靭すぎる。あと悪魔が基本英語話者なのも謎だし、突然喀血して最後にしれっと治ってる教皇も意味不明でちょっと面白かった。