やさい生活

キャプテン・マーベルのやさい生活のレビュー・感想・評価

キャプテン・マーベル(2019年製作の映画)
4.0
とにかく王道、構成が綺麗、エンパワメントされる。

地球に不時着して「お嬢さん」と呼びかけられ眉を顰めるヴァースを見た時、中高を女子校で過ごしたのち大学で6年ぶりに男女共学の環境に身を置いた時の感覚を思い出した。女子校はそもそも性別という括りでジャッジする必要がない。「女だから」という理由で行動や進路を制限されることはなく、逆に「女だから」重いものを持ってもらえたり優遇されたりすることも無かった。先生が「女性らしく」といった発言をすることも無かったため、学校の中にいる時、私たちは全員「女」ではなく「人間」だった。大学に入った時、世の中って結構男女の区別を気にしてんだなーと思った。少し息苦しいとさえ感じたこともある。だからクリー帝国では最強兵器だったというのに地球では突然スペーススーツを着たおかしいお嬢ちゃんとして扱われたヴァースの困惑はよく分かる。記憶のない彼女はまっさらだ。固定観念をすべて取り払った存在から見た地球のジェンダー観はさぞかし奇妙で窮屈に映ったことだろう。しかし、「クリー帝国のため」という大義名分で管理下に置かれ抑圧されていたヴァースにとっては大差なかったかもしれない。彼らの思想は非常に全体主義的で、兵士が自律的に考えることは許されない。でも真実を知った彼女がラストシーンで全て破壊してくれたのでオッケー。

王道な展開のヒーローものを女性を中心に据えて描いた点が大きな功績だと言える。そして、young ladyという揶揄に主人公の親友ランボーがはっきりと苦言を呈すシーンや黒人男性であるフューリーが白人のコールソンの上司である点など、できるかぎり全ての属性に平等でフラットな表現を目指す努力が見られる。ヴァースは肩を丸めて内股で歩くことはしないし、ヒーロースーツに「女性的」な装飾や意匠も施されていない。女性同士の連帯が描かれていたのも良かった。
 全ての固定観念から自由であることは難しい。それでも自分の良心にしたがって行動すべきだというポジティブなメッセージを持った良作。とはいえヴァースが支配から脱出できたのはひとえに彼女が圧倒的な力を持っていた(力を持っていたからこそ押さえ込まれていた側面もあるが)からで、そういった点ではポスト・フェミニズム的と言えるかもしれない。