ゆず

レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)のゆずのレビュー・感想・評価

5.0
フィリピン映画。マルティカ・ラミレス・エスコバル監督の初長編監督作はとても挑戦的な逸品。
かつて映画人だった老婆レオノールは事故で頭を強打し、半覚醒状態(ヒプナゴジア)に陥ってしまう。レオノールが目覚めたのはなんと脚本の中の世界だった…という奇想天外なストーリー。

ユーモラスで刺激的でカワイイ映画だった。チャーミングなおばあちゃんがアクション映画の中に入り込む。老婆とバイオレンスというミスマッチな取り合わせがとても興味深い。作中にレオノールの愛情が満ちている。

劇中のアクション映画の絵面がとても70~80年代で、懐かしさと監督の映画愛を感じる。
フィリピンではアクションスターが大統領にしばしば選ばれるほど映画が影響力をもっているらしい。
本作はそんな国で生まれ育ったエスコバル監督からの問いでもあり、彼女なりの答えでもあるのではないか。

明確に「映画制作の映画」でもある。私はこのテーマは大体面白いと思っているのだが、本作もその例に漏れない。最終盤にはメタ的な視点も織り交ぜながら幸福感溢れるエンディングへと向かっていく。
若手監督らしい自由な発想で作られた傑作映画。今年のマイベストに入るのは間違いない。
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