ナーオー

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのナーオーのレビュー・感想・評価

2.0
アリ・アスターの『ヘレディタリー』を抜き、A24配給のホラー映画としては史上最高興収を達成。『ヘレディタリー』を越える"傑作“や"ホラー映画の新たなクラシック"などと絶賛評を聞いていましたが、正直、かなり期待外れ……

監督を務めたのは本作が長編映画初監督作となるオーストラリアのYouTuber、ダニーとマイケル・フェリッポウ兄弟。YouTubeチャンネル『RackaRacka』で『Halo vs Call of Duty』とか『Harry Potter vs Star Wars』のようなYouTubeのおふざけ動画にしては異常にクオリティの高い動画を作ってきたコンビであり、確かに本作『トーク・トゥ・ミー』はこの二人の長編初監督作品としては良いのかも知れないけど、一つのホラー映画としては"平凡"だと思います。

もし本作が"未体験ゾーンの映画たち"で上映される作品の一つだったら、「お!意外な掘り出し物で面白い!」となったのかも。

本作はA24作品ではありますが、製作に直接関わっておらず、あくまで配給作品です。なのでホラー作品だけど、アート作品のような格調高い『ヘレディタリー』や『ミッドサマー』、『X エックス』、『パール』、『MEN 同じ顔の男たち』などの作品が好きで、そういう映画を期待している人には物足りないと思います……

本作『トーク・トゥ・ミー』はホラー映画ではよく目にする"降霊術"を扱った作品。例えばウィジャボードを題材にした『呪い襲い殺す』やその続編の『ウィジャ ビギニング』、日本でもコックリさんなどよるある題材。それ自体は何の新鮮さも感じられない題材を本作では“ハイになる”ことを目的とした"降霊術”、憑依=ドラッグのような中毒性として描かれており、そこは確かに他のホラー作品では観たことがない要素でした。

幽霊に取り憑かれた人を笑いながら写真を撮ってSNSへアップする。いかにも現代的。ある種のSNS批判のようにも感じ取れるし、それを今どきの若者に人気のYouTuberが作っているところは面白かったです。

ただ快楽を得るための憑依=ドラッグ、最終的にオーバードーズのように快楽を求めすぎたことで破滅していく。憑依がドラッグのメタファーと言え、そもそもこのテーマ自体にはなんの新しみはない。

よくある教訓話で終わっているのがとても残念。言っちゃえばホラー映画だけど、中身はダーレン・アロノフスキー監督の『レクイエム ・フォー・ドリーム』みたいな映画です。

最初に降霊術を披露する場面までは良かったですが、中盤以降は今まで見たことある、同じような「クスリ 駄目絶対」みたいな話がずっと続く。描き方も単調でかなり退屈しました。95分と普通ならばタイトな尺も本作に限ってはとても長く感じてしまいました……

とはいえ恐怖演出は良かった。
特にダニー&マイケル・フェリッポウ監督の言う通り、Jホラー要素を取り入れた場面はとても良かったです。黒沢清監督の『回路』や『cure』を連想する幽霊の見せ方。とても不気味でした。

他にも主人公ミアかあちら側の世界を目撃する場面。文字通りの"地獄"が描かれており、この"地獄"の描写がとにかく気味が悪くて良かったです。

本作『トーク・トゥ・ミー』、"駄作"とは言いませんが、ティーン向けホラー映画特有の"緩さ"か個人的には全く合わなかったです……
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