自由席

窓ぎわのトットちゃんの自由席のレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.0
原作は僕のような団塊ジュニアの世代なら、親の本棚にあったなって懐かしい一冊だと思います。
黒柳徹子さんの自伝的小説のアニメ化で、御本人がナレーションと製作(!)もされていて。

ネットでの評判が良く観に行きました。
よくある注目のされ方、ジャンルものの中で作家性が光っているとか、そういうのを想像していました。
が、そんなこちらの思いが恥ずかしくなるくらい、真摯に真正面から物語が綴られていて驚きました。

空想のシーンの美的センスはもちろん。
キャラクターのほっぺがみんなほんのり赤いんですね。子どもらしい可愛さのある絵で。表情も豊かです。
隙間にはまった主人公をみんなで引っ張って起こすシーンなど、健全なアニメ、マンガ映画に眩しくなりました。

駅の階段で降りてきた男性が主人公をよけて動いたり。最後、列車の外へ通じるドアを開けてから、戻る時足元を映したり。
そういった丁寧さも目をひきました。


そんな日常なので、徐々に影を落としてきく戦争や死がより怖かったり、悲しかったり。

最後、主人公が街中を走り、そこかしこにある戦争の影を描写するシーン。
とても心に残り、作り手のここが観せたいのだ、という気持ちも伝わってきました。

観終わって、自分の中の懐かしい純真さを思いだす、そんな作品でもありました。
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