救済P

アイドルマスター シャイニーカラーズ 第3章の救済Pのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

舞台挨拶現地にて視聴。

実在性を描写するために映画としての面白さが犠牲になっていると感じた。

全体的な空気感は1、2章と変わらず、穏やかなBGMによって起伏が平坦にされ等間隔に並んでいる点を一歩ずつ歩いているようだった。
激情を抱いた時のふわりと持ち上がる髪の演出や、ダンスレッスン時の一人一人の身体能力差が意識された動き方、首の動きと瞳の動き方が自然になるように工夫されているなど、細かい点で言えば丁寧で好意的に評価できる箇所が多くあるが、肝心の大本のシナリオが退屈で、かつBGMによって等間隔に並んだ点なので眠気を誘われた。ボーカル収録やレッスンを通して真乃のセンター適性が強調されるシーンに関しても演出らしい演出は皆無で、せいぜいレンズフレアや発光が焚かれる程度におさまっていた。

アニメ的演出の不在は現実感を醸し出し、アイドルアニメにおける現実感とは即ち実在性の描写に他ならない。ノーカットでMCシーンを描く、舞台裏や昇降機のシーンの挿入、アイドル一人一人の顔のアップによる存在感の強調、1stライブを模した楽曲や大道具など、アイドルたちの実在性を強調する要素が数多く見られた。しかしながら、それが映画として面白いかと言われるとそうでもなく、時間が連続的になることでドキュメンタリーのような様相を呈していた。

実在性と映画的面白さのトレードオフ以外にも不満点がいくつかある。

小学校を使った合宿は放クラは2回目でありながらそれが全く活かされていない。五色爆発的な合宿が行われていたことは既に判明しているのでそれに触れても良かったと思う。

特に思い出ボムでもない回想をライブシーン中に挿入する数多のアイドルアニメが採用し一つとして面白くなった試しがない演出が11話、12話においても採用されている。思い出ボムになり得ない決定的な原因は激情を抱く為のわかりやすい「見せ場」が欠如していたからだと思われる。また、回想中に目を閉じたアイドルたちの顔面を挿入した意図がよくわからなかった。

真乃の困難がほとんど描写されていないのでセンターに対する責任とその超克に対する激情を抱くことがなかった。

最後は真乃とプロデューサーのいかにもな締めのセリフで結ばれるので激情がない。

イベントの終わりがパンアップすぎる。

良かった点として3章の予告で判明していたがやはり『太陽キッス』は尺が多く割かれていることもあって楽しかった。また、1章から3章まで果穂の喜怒哀楽が丁寧に描写されていて感情移入を果たすことができた。
小声で歌うシーンが多かったのでASMR的な良さがあった。
はづきさんのStWが貴重。
ライブシーンは回想を除いて総じてクオリティが高い。

自分に合わなかったといえばそれまでだが、シャニマスのアニメ化と聞いて期待に胸を膨らませていたシャニPたちの幻想の中にあったアニメーションのほうが幾分か面白かったのではないかと思わずにはいられない。予算や時間の都合なのか、はたまた並々ならぬ信念がそうさせるのかわからないが、本音を言えばアニメ的演出をふんだんに使った現代アイドルアニメ的なシャニアニを見たかった。
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