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さらば、わが愛/覇王別姫 4Kのvanのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

どの作品にも言える事ですが。
理解して楽しむ為には、観る側もある程度のステップにいないと難しいです。

「覇王別姫」「京劇」「当時の歴史」
最低一つはこの中の知識・教養が欲しく、二つは無いと楽しめないなと感じました。
私は三要素、全く知識なしでの点数です。


主人公の運命を弄ぶように、京劇側の体制が個人を翻弄し、やがて京劇側も国の体制に翻弄されて行きます。
抗う事ができない二重三重の大渦の中で、主人公や登場人物がどの様な生き様を見せるのか。
ここが映画のポイントだと思います。

物越しで撮るシーンが鮮烈でした。
金魚鉢越しに映る、阿片で気が狂う蝶衣。
炎越しに暴露する、小楼と蝶衣。
場面が大きく変わる重要な場面で、どれも強く心に残りました。

一方で、印象的になる筈のシーンが突然終わってしまう箇所もありました。
蝶衣が衣装に火をつける場面。
同じく河辺をフラフラと歩く場面。
人物の心理が強い映像と相まって、カタルシスを感じられるはずが、その前に場面転換されるのは残念でした。

人物の心情も良く掴めませんでした。
疎遠になったり裏切ったり、助けたり。
そして、また裏切ったり。
教養不足の為、深い所での人物の行動原理の理解が難しかったです。
結婚前の小楼の、気風の良い性格が痛快でした。

レスリー・チャン氏の美しさは別格です。
舞台上は勿論、それ以外でも、なんて艶やかな、しなの作りかた。
同じ男性を観てるのかと、信じられなくなりました。
憂いを湛えた表情や、哀愁を帯びた感情表現にも気品が溢れ、バシッとシーンに決まります。
華やかな装飾と化粧の面白さも相まって、この点は気持ち良かったですね。

現実と虚構。
異なる空間の出来事が、同じ一つの内容に収斂する結末は、あまりに儚く、あまりに哀しい……。
蝶衣の姿はカメラには収まらず、小楼の表情も逆光で窺い知れない。

視聴者の期待している内容を、最高の演出で捉えたラストに、胸が熱く熱く、疼いたのです!
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