きねぼっち

ミッシングのきねぼっちのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

してやられた感があるけど、面白い!
正直、ブラックコメディとしてのキレに感服!!
ビターなラストも素晴らしい!!!

理不尽な不幸、悲嘆が深すぎて孤立、白黒つかないけど一抹の救いが見える結末などがシークレット・サンシャインを想起。

石原さとみの狂乱演技は異常すぎたけど、どんなネガティブな顔しててもすごい美人でビックリ!
そういう絵面の良さが、本来あまりに残酷で絶望的な内容を緩和し、自分のようなナイ~ブな人間にも視聴できるレベルにしてくれていたとおもう。
石原さとみさん、ありがとうございます!

で、主人公が悲嘆のあまりモンスター化してしまう展開には呆れとともに驚愕。
それに振り回され、試されるのが良心的なテレビ局員と温厚な夫で、なんだかんだで二人は試練に耐えきるが、その結末は対照的で面白い。

テレビ局員はいくら自分がモラルを保ってもすべて徒労に終わり、人の悲劇もアザラシも等価に扱わねばならない報道の仕事に呆然とするしかない。
が、夫はそれまで無駄なあがきでしかなかった行動がわずかにでも他人の心を動かしたことに涙する。

結局、主人公の深い悲嘆はだれにも共有できないけど、かといって全くの虚無でもないという結果。
まー、さとみつながりじゃないけど、つかみが強烈だが、白黒つかないモヤッとした結末で、なんか文学ぽい雰囲気をかもす宮本輝の小説みたいな雰囲気も感じた。

とはいえ、バッド/ビターエンドの効用として、同じ問題を抱えていて主人公に共感する観客を突き放さず、寄り添ってゆくというのがあると思う。

もしハッピーエンドで主人公の問題が解決したら、共感していた観客としては主人公に「もう自分は問題解決したんで、あなたと同じつらい立場ではなくなるんで、さようなら」みたいに置いてきぼりにされた気分になることもあるはず。
殊に、本作のような実際の事件を参考にしたような話だと、それは心なさすぎる仕打ちともいえる。
バッド/ビターエンドはそれを上手に回避する妙策ではなかろうか。

ストーリーがあまり起伏がなくて、こういう悲惨な事件の最大公約数的な展開だったのが、ちょっと残念かな・・・キューブラー=ロスじゃないけど、受容までの5段階みたいな感じ。
全体的にショッキングなエピソードの羅列だし、弟の問題はちょっと詰め込みすぎな気がしたし、露悪を感じた!

正直、「空白」ではとってつけたような救済エピソードだったから、監督の良識を疑っていたけど、ひとまず誤解だったと反省!
きねぼっち

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