心揺さぶられる作品だった。2052年のパリ。80歳の誕生日を迎えたジュリア。これまでの充実した人生に満足しつつも、過去を振り返り、「あの時あの場所で違う選択をしていたら、、」自分が過ごしていたかもしれない別の人生に思いを馳せていた。
ほんの偶然だったり、少しのタイミングだったり、何気ない瞬間から枝分かれして行く人生。それはジュリアだけではなく、誰にでも起こりうるドラマがある。
ピアニストを目指していた17歳のジュリア、ベルリンの壁崩壊を知り友人達とベルリンへ向かったその日から、些細な出来事の積み重ねで枝分かれしていったかもしれない4つの人生を思い描き、並行世界として同時に見せていくストーリー展開。
17歳から80歳までのジュリアの人生を一人で演じたルー・ドゥ・ラージュの圧巻の演技に終始魅了された。髪のスタイルや色で年齢の変化を上手に見せているので、違和感なく彼女のそれぞれの人生に入っていけた。ともすると混乱しそうな場面の数々なのに流れるような自然な演出が素晴らしい。
もしもあの時の積み重ねが彼女の人生を大きく変えていき、それぞれが決して楽ではなく波乱万丈ではあるが、どの人生を選んでもジュリアらしい人生であり、決して不幸ではない。
自分自身の過ぎた日々を振り返り、これが最良の道だったのかもしれないと思わせてくれる作品。胸を熱くする感動の物語