こなつ

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩のこなつのレビュー・感想・評価

3.8
これは劇場での鑑賞を逃した作品。タイトルからクリスマス向きかとわざわざクリスマスに配信で鑑賞したのだか、胸が張り裂けそうになってレビューがなかなか書けなかった。

「キャロル・オブ・ザ・ベル」は、ウクライナで古くから歌い継がれている民謡を基に編曲された世界的にも有名なクリスマスキャロル。初めて聴いたのは「ホームアローン」だったが、聖歌隊が歌っているのを聴いたことがあってそれはそれは美しいメロディで心に沁みる。

1939年ポーランドのスラニスワウフ(現ウクライナ領のイヴァーノ=フランキーウシク)にあるユダヤ人のアパートに、店子としてウクライナ人の音楽一家とポーランド人の軍人一家が引っ越してきた。最初は文化や宗教の違いから馴染めなかった3家族だったが、歌や音楽を通して次第に心を通わせ助け合うようになる。第二次大戦によってソ連に侵攻され、続いてナチス・ドイツに侵攻され、再度ソ連に侵攻されるという悲劇に翻弄されたウクライナの人々。ポーランド人とユダヤ人の両親達は迫害によって連行され、ウクライナ人の妻ソフィアが、ユダヤ人の娘ディア、ポーランド人の娘テレサを預かり、自分の娘ヤロスラワと分け隔てなく世話をして子供達を守り通して生きていく。

時は、1978年空港で再会する3人の映像。最終的にソフィア達もソ連軍に連行されていたが、3人の娘が成長して再会出来たことは奇跡のようだった。ポーランド人の妻が釈放されて、ディアとテレサをソ連の孤児院から引き取っていたが、ヤロスラワはソ連の軍人の前で、ウクライナの民謡「キャロル・オブ・ザ・ベル」を歌ったことで、一人少年院みたいな所に連れて行かれていた。

まるで、今のソ連の侵攻を予感していたかのようなこの作品は、決して過去のことではないとあらためて感じる。ずっと戦争に苦しめられてきたウクライナの人々の悲しみに胸が痛い。自分の命を掛けて子供達を守った勇気あるソフィアが、最終的にシベリアの流刑地で過酷な環境の中、無惨に死んで行った事を思うと何とも居た堪れない。

戦争の映画は数々観てきたが、やはり子供が絡んでいる作品は、どんなに感動モノとして描かれていても切なさが残る。世界に平和を!と心から願った。
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