Yukenz

STILL:マイケル・J・フォックス ストーリーのYukenzのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

マイケル・J・フォックスは、私が小学生の頃から既にテレビドラマ「ファミリー・タイズ」で人気を博していた俳優だった。更に大人気映画バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズなど多くの映画で主演を張って話題を集め、日本でもメジャースターの一人として広く世間の知るところとなった。私も彼の出演する多くの作品を見たし、彼のファンでもある。

笑いで人々を気持ちよくさせる特別な才能に溢れ、華やかなステージに立つ人気絶頂のトップスターが、まさかキャリアの最盛期だった30歳手前からパーキンソン病を発症していたとは。その事実が公表された当時、凄く驚いたのを覚えている。何でもないフリをして作品に出続けた約8年間は、さぞ息苦しかったことだろう。

当時の怒りや戸惑い、葛藤などが本作で赤裸々に吐露されている。左手の震えを周囲に気付かれないように神経をすり減らす姿が涙ぐましい。

何故病気を公表しなかったのか。「病人は笑えないからね」と言うように、公表して今までのように仕事が入らなくなるのを恐れたというのはそうだろうが、それよりも、自分自身が病気のことを認めたくなかったようだ。「シラフでいるのは苦行だった」「現実から逃げていたかった」「別人を演じていたかった」などの告白が続く。

明るくひょうきんに見えても、オフステージではどうしても病気のことを考えてしまうし、見た目とは裏腹に脆く傷つきやすいハートが常に周囲のプレッシャーに苛まれ、ストレスで自分自身の立ち位置が分からなくなり、不安に苦悩する。
人気スターであってもやっぱり普通の人間である事が分かる。酒に走ってしまうのも理解できる。

奥様であるトレイシー・ポランは彼と悩み(それも相当の重荷)を共有しながら、聡明で気丈なサポートを続けている。病気のことを知った際の「病める時もね」との一言が彼女をよく表している。彼女がマイケルにとってどれほどの安定剤になっていたかと考えると頭が下がる思い。今でも一家5人の団欒で笑い合っている様子を見ると、とても素敵だなと思う。

マイケルはパーキンソン病の研究支援の功労も大きいようだ。「病気だからといって世界から身を引きたくなかった。まだ力はあると気付けた。」「病気でなく感動で震えた。」こららの発言には私の体も震えた。マイケルはもの凄く強いし、コミュニティを結成して20億ドルを集めた彼はやっぱり世界のトップスターだ。

今は状況を受け入れ、奥様や家族のためにも自分自身で解決法を見出さないと。生きていると実感しないと、と言っている。

おこがましいが、そんな彼をこれからも陰ながら応援していきたい。そしていつの日か人類がパーキンソン病を克服出来ることを願ってやまない。
Yukenz

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