Yukenz

星の旅人たちのYukenzのレビュー・感想・評価

星の旅人たち(2010年製作の映画)
4.0
身近な人の肉体が亡びるというのは残された近親者にとっては相当なダメージになるのだと思う。特に両親にとっての我が子となればその思いは絶望的だろう。自分より早く逝ってしまうのは自然の摂理に適わないのに、かといって自分ではもうどうしようもない。暫くは「生前ああすればよかった、こうすればよかった…」と後悔の念しか湧かないないのではないだろうか。
私自身にしても、もし子供が同じようなことに遭ってしまったら、と考えたら胸が締め付けられる。

さて、本作では息子の意を継いで始めた父親の単独での巡礼の旅だったが、いつの間にかツレができる。といっても初めは単に目的地が同じだからという関係性で仲間とまでは言えない。失意の中ではすぐにフレンドリーにはなれる心情ではないのだろう。この辺りの父親トム役のマーティン・シーンの表情や仕草が堪らなくいい。
息子で監督のエミリオ・エステバスは何を感じただろうか…

苦行と思われる巡礼に臨むのだから、ツレたちもそれぞれに悩みを抱えていて当人にとっては一大懸案事なのだろうが、時には酒を酌み交わして気を休める。旅行モノの映画ではないが、地方の町の風景や料理を垣間見る瞬間には少し和まされる。

道中様々なトラブルに巻き込まれながら、いつの間にか言葉を交わさなくても思いが通じるようになるから不思議なものだ。やはり時間とは大いなる治癒剤になり得るのだと教えられる。それは私の実体験からも深く頷けるところで、とても共感。

私にとっては思い深い一作になった。

彼らの足跡をGoogleマップで確認しながら、当地に想いを馳せつつゆっくり辿るのも興味深いだろう。
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