チッコーネ

予言のチッコーネのレビュー・感想・評価

予言(2004年製作の映画)
3.7
ハードな劇画タッチが苦手で読んだことがない、少年ホラー漫画クラシックの『恐怖新聞』を原作としているが、忠実な映画化というより設定を借りている。
いわゆるJホラーの立役者である監督の、劇場公開作品を観るのは初めてだったが、落ち着いた映画話術と美しく安定した画面に感心させられた。
異形を示す特殊加工はあるものの、畏怖の対象はあくまで「1枚の紙切れ」というのが、地味で良い。

霊能者の家、精神病院の独房、そして「鬼形礼邸」の美術はいずれも安っぽいところがなく、終始的確な照明も、雰囲気を盛り上げる。
画面中央に窓を配した、酒井法子と吉行和子の対話カットバックは特に印象的…、吉行がメイクアップの力で、いつものくたびれた姿より格段に美しく見えていたのにも驚いた。
『呪怨』シリーズにも出ているのりPとホラーの取り合わせは意外だが、当時世界的に注目されていたジャンルへの進出は英断で、さすが大手サンミュージック所属という感じ…、シリアス場面で無駄のない演技を披露する集中力の高さに、好感を抱いた。
寺山修司のアングラ芝居出身の三上博史にとって、このテのエキセントリックな役柄は朝飯前のはず、しかしJホラー系への出演は本作のみのようだ。
家族愛でホロリ、の方向にまとめた脚本は好みでないが、くどいというわけではなく、どこかファンタジック。
さまざまな角度からの要望をまとめるひとつのかたちと考えれば、そう悪くなかった。