K

FLY!/フライ!のKのレビュー・感想・評価

FLY!/フライ!(2023年製作の映画)
3.8
26/3/2024 tue tohoシネマズ日比谷 スクリーン11 E8 18:30〜
原語版。同日二本目。
フルスクリーンのシネスコ。スクリーン中央の高さどセンター。ほんと良い箱。

---------------

遅れても来たよ

---------------


伝統的で保守的な、理想的な家族観の再生産にならないとは言い切れないし、御多分に洩れずこの映画も米国映画らしい"父と息子の成長物語"がメインではあるんだが、その型に則ったスラップスティックを作るのが本当にうまい。イルミネーション作品を観ると、この世にはまだまだ作られていないギャグ表現があるんじゃないかと新鮮に思い知らされる。

移民の話かと思って臨んだけどそこまででもなかった。代わりに米国の開拓者精神に満ちた脚本ではあった。マイグレーション(渡り)とそれに起因する冒険心の開花の話。やろうと思えば移民の話です!ユダヤ教徒の話です!とすることも出来たんだろうけど、現時点ではイルミネーションの仕事ではないもんな。

/フロントシートで両親が子供の秘密裏にマジの話をしていて、リアシートで子供達は暇つぶしのじゃんけんをしている、みたいな家族のリアリティ! "空じゃウンチできないよ〜!降りてよ〜!"のシーンの母親の叱り方とか祝日の商業施設でよく見るもんな。

/しかし長年イルミネーション観てきてやっと気付いたけど、8割くらい大人からの視点で、2割くらい子供からの視点と配分されているのだな。D映画がほぼほぼ子供からの視点で描かれ・大人からの視点に切り替わる時はかなり格言的で一人称的であるのに対して、イルミネーションは徹底的に第三者視点で描いているような気がする。その軽さが好きだ。世界を見る時に変に気負わなくていいのだと思えるから。

/イルミネーション作品の、画面の端から端まで満ち満ちるフェチズムが大好き。クリエイター冥利に尽きるよなあ。両親が網で連れ去られてデッキで泣き転がる娘のちいこさ、大好き…………………。

/またオークワフィナが鳥やってるし、ジャメイカを目指す話だったし、調理場ファイトはあるし、5割くらいリトルマーメイドだったかもな

/ダンおじさんのしょうもなさが描かれてるのが本当に良かった。"正しい"家族をちゃんと描く裏で、"正しくない"とされる生き方を実践するキャラクターがいると本当に安心する。ギルロイとのほんのりしたバディ関係も良い。

/どの映画にも根底に流れる音楽があるけど、今作はサルサなのが陽気で良かったな。劇中の"サルサ・チューズデイ"のまさに火曜日鑑賞でもあったし……。

/鳥映画だったな〜〜。種々様々な鳥たちが出てきて、それだけで目に楽しい。注目したのはヘロン(サギ)の描かれ方で、『君たちはどう生きるか』のそれと似て、老獪で真意の読めない感じだったのが印象的だった。一般的にはそう思われてるの?! ここのボート小屋のホラーメイズっぽい演出も最高だった。

/ダンスで終えるのはイルミネーション作品の醍醐味だけど、今回は明確に"ゴールでない"土地で踊るのが新しかった。道半ば。ゴールでないと言えば、中盤NYCに迷い込んで地下道に突っ込みかけてトラックに追われて道を戻る、という性急な視点移動のカットも面白かった。行って戻る映画、怒りのデスロードか?!と思って興奮した。
トーンズ&アイのクラウディデイ(懐かし〜〜〜)を使ってるのも良かったなあ。踊りたくなっちゃうよな〜〜。
K

K