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あの夏のルカのKのネタバレレビュー・内容・結末

あの夏のルカ(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

29/3/2024 fri シネマイクスピアリ スクリーン6 F9 15:15〜
若干下手よりどセンターいつものベスト席。中サイズの箱。左右黒帯ビスタ。吹替。


/そういえばジャックディラングレイザーくんとジェイクトレンブレイくんだったわ、イタリア語訛りの原語版でIMAXで観る機会を奪ったこと一生許さんぞD

少し強めの雨が降る、静かな夏の日に観たかったな〜。絶対良いよ、作品終盤に降る祝いの雨のような優しさに包まれて劇場を出たかった。

ピュアな良さに溢れている、ミニマルな一本だった。いいねえ。生涯の宝物として手のひらに温かく包んで持っときたい感じ。


/ピクサー、"クィア的なもの"はやるけどそろそろ直球でクィアネスの話をやればいいのに、とは思うんだけど、あのクソ右派企業の下でできるクィア的表現度の限界がこの作品だったのかもと思うとしょうがないかあ〜とも思っちゃう。
でも強い意志を持つジュリアの存在を一切茶化さない部分は無意識でもフェミニズム的であるし、ジュリア自身もルカとアルベルトがシーモンスター(シーモンスターという呼び名、あまりにも一方的なマジョリティ視点すぎだ)だと気付いた時に一切気持ち悪がらずに"ここにいると危ないから"という理由のみで二人をポルトロッソから立ち退かそうとしたし、なんかそういうピクサーらしい優しい視点だけで構成されてるのもやっぱり良かったな。
夢まぼろしではあるだろうけど、ピクサー、いつかまた独立、してね…………。


/色んな作品からエッセンスをマッシュアップしていた感じ。だから海や陸の明るい表情を取り入れながらもこぢんまりしたスケールに感じられたんだ。陸に憧れる『リトル・マーメイド』、怖いけれど知らない世界を見てみたい『Tangled』、よそ者である自分だって勉強して世界を広げたい『ピノッキオ』。
急進派の当事者アルベルトと保守派の当事者ルカの話で、『ブロークバック・マウンテン』っぽさもあった。片方はこんな差別に満ちた場所ではなく理想の土地へ向かい二人だけで楽しく暮らそうと言い、片方は親にどれほど手酷く勘当されるか分かったものではないため故郷を出るべきではないと主張する。ジュリアとのほんのりした三角関係(しかもジュリアを巡るものではなく、ルカを巡って)も真正面から描かれていたし。ボーイミーツボーイの話こんなに楽しいならもっと作ってほしい!ピクサーにはマジで。(んで絶対劇場公開してくれ)

街のちょっとした嫌なやつの描き方だったり、街のこぢんまりした規模感とかは『シチリア・サマー』を思わせてちょっと体調悪くなった。"皆俺を愛しているだろ?!"ってあくどくイキる悪役の描き方、かつて強者ムーヴで振る舞っていた自分を思わせてほんとツラくなったよね。。。。。(どこでダメージ受けてんの)


/アルベルトが街に残って漁するの、ルカの分の学費稼ぐために親父さんと働くってことでしょ?今後アルベルトが"これで良かったんだ"って悔やむように考えない人生であってほしいなーーーー頼むーー

ちゃんと痛みが描かれていて誠実な作品だったなあほんと……。自転車レースで下らなきゃいけない大きな坂道で、アルベルトが自身の身体を濡らしながらもルカの強い夢のために手を貸すという行為。自分もルカと一緒に行きたいけどここに残るという選択を取ること。主にアルベルトに痛みが集約されちゃうのが辛くはあるが……。
(↑ビニタキさんのポッドキャスト聴いてやっと気付いたけど、アルベルトがジュリアの父親と暮らすのは、血縁じゃなくても家族として暮らせるっていう結末のためか!)
ルカ、大きくなってね。知識は自分をいろんなところへ連れてってくれるからな〜!


/シーモンスター(って言うの心が痛む、魚人というのが正しい表現なのかはわからないけどとりあえず魚人としておく)もとい魚人だとバレても本格的に狩りは始まらない空気感について、フィクション的だなあとは思うんだけど、実写版リトルマーメイドが差別がない世界を当たり前にフィクションに落とし込んでいたように、そういう祈りなのかもしれない。

老いた女性二人組が最後に傘を外して魚人だとさらりと身を明かすカットが最高。いるんだよな〜〜身近にさ!排除さえしなければ自ずと身を明かしてくれるよ、マイノリティってのは……という視点!


/イタリア的なモチーフって何でこんなに心惹かれるんだろうね〜〜。鮮やかな緑、青、黄色、オレンジ。アルベルトの塔からエクスパンドして、ポルトロッソ(名前ほど大して赤くないけど、夕焼けが綺麗に見えたりするんかな?)の街の風景が少しずつ明らかになっていくワクワク感凄かった。ジュリアの家の家具や本でごちゃっとした積み木みたいな狭さとかたまらん、ここに住みたい。

ファンコみたいな丸っこいキャラクターデザインすげーいい。全員フィギュアにして揃えたい感じ。
おばあちゃん(にんげんのすがた)、可愛すぎる。シーモンスターの時も可愛いんだけど。

/エンドロールの曲でガッカリしちゃった。少年時代なんて"日本の夏を描いた歌謡曲"の中でも最たるものだろ。この映画に日本的な情景いらね〜から!!マジで!!ぶち壊すな!!あと多分日本の学期間の夏季休暇とジュリアのように"学校のない時期だけ港へやってくる"・学年が変わる大きな区切りであろう夏休みとではそれに対する情感が違うと思うの。

/↓ビニタキさんのルカ感想ポッドキャスト
https://open.spotify.com/episode/1m8EkKckBtgVHLFnByliwI?si=UFIC7KzNTHmwphLevwTM5w&context=spotify%3Asearch%3Abeggin
・感動の結末が二段階ある。
・家族がなかったり疎遠だったりする場合は?の製作側のアンサー。血縁じゃなくても家族愛は築ける。その優しさ。
・ジブリオマージュが多い。ポルトロッソ→ポルコロッソ!ああ!でエンドロールで子猫が増えるのは魔女の宅急便。ジブリ見なさすぎて気づかんかったわ〜
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