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ナショナル・シアター・ライブ 2024 「ディア・イングランド」のKのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

☑️22/3/2024 fri tohoシネマズ日本橋 スクリーン4 E10 19:00〜
小サイズのスクリーン。下手寄りセンター。次回9にしてみる。


/男らしさ 強さ、または弱さについて向き合うことについて

ナショナルシアターのインスタとかで前から確認はしてて、おもろいらしいというのは知っていたけど、こんな話なんね〜!おもしれえテーマ!ペナルティをメインテーマに据えてチームの移り変わりを描くという。選手のことサカしか知らんけど、一幕終わった今んとこ楽しめてる……。有り難い。

/ヴァーヴ!変えられない自分の型…選手個々の型があるけど、どう内側を変えていくかってことよね。スムーズに進行しすぎているのは前進力を持たせる上で仕方ないこととは思うけど、葛藤も見てえな〜。
↑って書いてたけど二幕以降めちゃくちゃ葛藤の話で満足しちゃった。ペナルティという個人戦ではなく、チーム、のみならずファン達、さらには国全体を背負うほどの気力や団結力を得ていく話だった。スゲ〜〜
でも余力があればもう少し掘り下げて欲しかった。もっと出来るんだから。

にしても、「負けても良い」「負けた先に何があるか」が題材になってしまうほどイングランド代表はそこにフォーカスできてなかったのか、ってのが衝撃。スポーツマンなら絶対そこは通る道だと思ってたから。それがギャレスとピッパ博士による改革元なんだけどね。


/演出がすべてスマートで、正解の形ってこれだよなあと強く思うものばかりだった。幕間明けの、イングランドの勝利を願う民衆の大騒ぎみたいな派手な部分もあるんだけど、一番惹かれたのは選手一人一人が抱え込む不安に向き合う時の演出で、照明が落ちた暗い中ベンチに座り込んで孤独に項垂れる彼らの中で心の叫びを上げるもの。

選手ロッカーが基本回転舞台の上を動いて半円形を作り、時にプラスチック製のイスを役者が運んだり倒したりして場転するものが多い。スポーツを報じるTV画面だとか、スタジアムの天井を思わせる円形に照明が張られたシーリングとそれに鏡写しになったような丸い床。演出のみならず美術もスマートだ。

/演出ああベストオブエネミーズの!
装置はああリーマントリロジーの!!っていう納得感すごいある。

何よりこのスピード感でここ数年間のことも含め戯曲化して素晴らしい演出して作品として出してること自体がすごいな(ジョジョステージの人たち見習って)

これ実際の選手たちや内実を知ってる人なら再現度の確認とかも含めめちゃくちゃ面白いんだろうな。

/ソーシャルメディアを使ってファンを広げ(それは彼らの力にもなりプレッシャーにもなる)、試合の場に政治的なメッセージも取り入れて差別への力強い抵抗を示してみせたり、まさに長い歴史を持つイングランドのフットボール界の新たな風になったことはファンでなくても理解できる。何せ、彼らも我々の生活も当然政治の中にあるんだからね。当たり前の活動だよ。

(参考)人種差別的な中傷する人は「ファンじゃない」、イングランド主将らが非難
https://www.bbc.com/japanese/57802835

テイラースウィフトレベルですら辱められるんだから、グァーーーーッ!!!て頭掻きむしりたい気分になるな、フェア精神を湛えているべきフットボールファンに差別されるというのはどれだけ屈辱か。

/ハリーがペナルティを外してもチーム全員が彼を抱きしめ、スウィートキャロラインで踊って締めるの、観客の全員が好きだと思うよ!やば。。全然ファンじゃないけど"ようやった……"の泣き笑いの気持ちが込み上げてきたもんな。。

/これ、ブックエンド演出なんだけど、実際のチームイングランドの結果を知ってて観てる人と何も知らない観客とでは大分受けるものが違うのでは?!
しかも、彼らしかいない試合の場面では美術に投影されたスタジアムの背景や観客の声援、回転の演出などによって完全にピッチにしか感じられないという。

/俳優達の柔らかな身体性も素晴らしい。

/てかフットボールに興味なさすぎるから解説読んで初めて知ったんだけど、普通に世界戦で勝ってなさすぎるだろ。よくこれでフットボール大国として名を馳せてるな!代表よりクラブのファンが多いんだろうな。


(4月6日追記:)え?!Bitter Sweet Symphony使うとるんやねとシンプルに思ってたけど二幕始めの乱痴気騒ぎの曲"Vindaloo"のMVがBitter〜をパロってて、今回の演出がVindalooのmvをパロってるってこと?!何重構造?!
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