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対峙のKのレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
3.8
26/3/2024 tue シネマイクスピアリ スクリーン8 E8 11:00〜 キネマイクスピアリ作品
フルスクリーンのビスタ。どセンターいつもの席。画面と近くていい箱。


/また宗教の話してる。『ドッグマン』に引き続き。今作はとても"赦し"がテーマの作品だったように思うけど、多分それ以上に聖書からリファレンスされたものも多いんだろうな。

舞台劇のような神経の張り巡らされ方が印象的だったな。序盤自分の都合で眠かったのが勿体ない。
ティッシュボックス、有刺鉄線に巻かれた風に靡くオレンジのリボン、加害者遺族の妻が趣味で作ったと持ってきた花束。小道具にすら意識が通っている。
序盤の、両家族とも互いにゴールの見えないまま、当たり前だけど詰問のようなタームに入ってしまう悲しさ、答えなんて正解のルートなんてないんだけど、そこから光を見つけるに至るまでの道のり。

/ここで終わっても綺麗だな、というカットいくつかの後に、加害者遺族の妻が一人戻って現れ、"彼の怒りのままに私が殴られていれば、彼の本当の姿を理解できたのかもしれない"と告白する場面の切実さが衝撃的で印象深い。
"私の語りは他の家族とは違いすぎるから"、と密室での息子への語りの機会を得なかった、もしくは自ら避けた彼女はそう告白する。子供と分かり合えなかったこと。子供と向き合わなかったこと。それが一端となって多数の命を巻き込んでしまったかもしれないこと。多くの被害者家族、更に言えばバッシングをする世間一般への謝罪と自己批判の長い長いタームを終え、やっとこの台詞まで辿り着くことができたなら、それが少しだけ救いであるのかも。

/被害者家族の妻に、子供の幼い頃の話を語らせる場面を入れたのがすごく良かったな。この場面で劇場で啜り泣きの声が結構聞こえていたのも。身近な人を喪くした立場の人であれば、結構ここすごく心に来るのかもしれない。
突然奪われた命--被害者加害者両側ともの--へは、喪の作業が許されないのだな。そんな暇もなく悲しみの大きな重荷だけが身にのしかかるのだろう。なぜそこへ至ったのか、なぜ死ななければならなかったのか。語り合うことでしか。分かち合うことでしか。それが教会の意義と重なる。私たちには知る余地もなかった子供達のバックグラウンド、その厚みに心を寄せながら。

/あまりにも綺麗な結末すぎるのかもしれないけど、現実に同じような事件で傷ついた人も多いものだから、この作品がそういった人々への多少の救いになっていることを願うばかり。

/しかしこんなに濃厚な宗教映画だと知った後だと、幸福の科学映画とかと何が違うんだ……という気持ちにも多少なる。言っちゃえばヴィルヌーヴ作品とかも結構そうじゃん。半年くらい前に、アメリカ映画ランキングで右派だったか宗教映画が興収ランクインして問題視されてた件があったじゃん、あれと今作はどう違うんだろう……。わかる人教えてほしい。
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