Ichiro

首のIchiroのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.2
<感想>
全体を通して感じたこととしては、完全に「戦国版アウトレイジ」である。
自分の私利私欲しか興味がない人間しか存在しておらず、言わば全員悪人の世界。
ただ、この時代を生き残り、かつ天下統一を目指すのであれば、悪者になること以外他に無い、というところがアウトレイジそのものと類似している所だと感じた。
時代劇系の作品はほとんど見たことなく、日本史をほとんど知らない私でも完璧に引き込まれるストーリーと映像。
北野武監督の独自解釈がかなり含まれているだろうとは思うが、私のような初心者でもかなり分かりやすく、そして引き込まれるようなストーリーであった。

少し気になったのは、男同士の色恋シーン。
当時の人間もおそらく存在したであろうが、あの織田信長もそうだったのか?
どこまでが解釈なのか不明だが、歴史をもう少し知っていれば楽しめたかもしれない。

役者全員がハイレベルな役であることから、完成度がとても高く、一人一人が印象に残る役ばかりであった。
また、個人的なMVPは、出番がそれ程多くないにも関わらず、存在感が際立った勝村政信氏と小林薫氏と感じた。
特に小林薫氏が演じる徳川家康は、本作の中でも最もズル賢く飄々としていた。
世の中でも徳川家康のような人が、簡単に人の上に立ち、賢く生きる人間だと感じた。


<総括>
あの「アウトレイジ」から6年越しの作品となり、世界中の期待が膨らんでいたにも関わらず、その期待値を何十倍も超える作品となった。
カンヌ国際映画祭では上映後にスタンディングオベーションが数分間続いたといい、北野武監督は日本だけでなく世界で認められている監督であることは間違いない。
所々ビートたけしの世界観が映し出されるところもあり、シュールな笑いとブラックジョークが紛れ込んでいる。
そういったところもあって、北野武作品にはまだまだ飽きることがない。
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