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哀れなるものたちのIchiroのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.1
<映画への一言>
世の中への挑戦状


<良かったこと>
・自分の人生を見直せる作品
・人間の成長のリアルさ
・心に刺さる言葉
・全ての映像が芸術的
・度肝を抜かれた演技

<悪かったこと>
・少々しつこい性描写
・ベラの人間性の拗さ


<総括>
この作品は映画という名のもとにある、世間に対する主張であるように感じた。
主人公ベラは正直で真っ直ぐな人間、少し悪い言い方をすると我儘であるが、大胆に見えて全シーンが極めて繊細であることが面白い。
世間ではよく「空気を読め」という言葉が飛び交い、空気を読む人が出世したり周りから好かれたりする傾向があるが、本作はその傾向に対して正面から立ち向かっているように感じる。
あるシーンでも、世間の要求に応えなきゃいけないという表現があるものの、無理やり従う反面ベラの表情は全く心に思っていないものに感じた。
ベラ自身は「飽きた」という言葉で終わっていたが、その言葉には自分の考えを否定されたものや、意味のないものに従うこと自体馬鹿らしいというようにも読み取れる。

昨今の情勢では、LGBTに理解を深める風潮となっているが、未だ浸透していないのが現実であり、自分のありのままに生きていくことを時には否定されてしまう。
そんな世の中に今必要なのが、こうしたベラのような人間であるのかもしれない。
ベラは、言わば世の中に対する代弁者であるとも言える。

本作は生まれ変わった女性の成長物語と言われているが、個人的には世間に対して人間の本音を真っ向から叩きつけている作品であるように感じた。
アカデミー賞候補に上がっているが、仮に受賞されなくても個人的には広く世の中に広がって欲しい作品だと感じた。
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