RYUYA

首のRYUYAのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
あのアウトレイジの最終章ですら100分ちょいにまとめてしまうほどソリッドな編集が持ち味のたけしさんが、131分の映画を世に出してきたことがまず驚き。編集段階で一度中断したことがモチベーションに影響したのか、「いつもなら絶対もっと切ってる!」って箇所が多かった気が。“逆・ディレクターズカット版”的なやつがあっても面白そう。まぁ、俺は盲目的なファンなので長く観れた喜びが勝ったけど...。

あのカッコいい戦国武将たちが全員クソ悪人で、平気で女子どもの首は飛ぶわ、男色やるわなんだけど、なぜか爽快。この時代にこの修羅を撮って出せる唯一の男のブレなさにシビれた。「百姓出の天下人」をまさに自身が演じているのも最高。綺麗事を嫌い、世の中の不条理を小馬鹿にしながらしょうがなく生きて、死ぬ時は一瞬、みたいな死生観。北野映画を通して自分もかなり影響を受けているなぁと今作で実感した。

悪人たちの根回し合戦やビヨンドで顕著だった「ガリガリの権力者のわめき」は近年のアウトレイジシリーズを思わせるし、成り上がりを目指す百姓たちのサイドストーリーは『キッズ・リターン』で描かれた高校生漫才師を連想。合戦のシーンだけ派手に見せといて、あとはシンプルなド正面のカットバックで見せ切ってる感じとか、やっぱすげぇなと。役者が豪華だから見れるってのもあるけど、ほんと無駄なことしないよなぁ。主演俳優揃いすぎて、桐谷健太が端役というね...。一番笑ったのは切腹シーン。これまで数々の登場人物を瞬殺してきたたけしさんが、逆に「なかなか死なない」で笑わせるのヤバい。あとやっぱラストカットのキレ。テーマに簡潔。シビれた。
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