こなつ

キリエのうたのこなつのレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
4.0
新境地を魅せた6人組ガールズグループ「BiSH」。今年の6月に解散したが、楽器を持たないパンクバンドとして独特な表現力が魅力だった。そのメンバーのひとり、アンナ・ジ・エンドの映画初主演作品。
岩井俊二の原作、脚本、監督とあって予告編からグッと惹き付けられた。それでも178分は長いなぁと思っていたのだが、アイナ・ジ・エンドの歌が聴きたくて鑑賞。

特徴的なハスキーボイスで切なく歌い上げる歌声に魅了された。美しいフレーズ、素朴だけど柔らかい。

物語は、石巻、大阪、帯広、東京を舞台に歌うことでしか声を出せない住所不定の路上ミュージシャン・キリエが、13年間の時を経て、それぞれ必死で生きる男女3人の人物と繋がっていく。

高校生の恋物語、震災で大切な人を失った夏彦(松村北斗)の悲しさと後悔。生徒の話に耳を傾け寄り添う、心温かい先生(黒木華)。女である事を武器に生きてきた母や祖母を非難しながら同じ道を歩く女(広瀬すず)の愚かさと末路。路花と希(アイナ・ジ・エンド)真緒里と逸子(広瀬すず)2つの名前で生きるふたりの絆。岩井俊二の美しい映像と共に物語は静かに流れていく。

バッググランドの様に耳に届くアイナ・ジ・エンドの歌声が、切なくもロマンチック。熱く胸に響く主題歌「憐れみの讃歌」。彼女の独特な世界観と表現力を強く感じた。

広瀬すず、松村北斗、黒木華が好演。
確かに178分は長かったが、静かに余韻が残る作品だった。

新宿の映画の帰り道良く見掛ける路上ミュージシャン達。いつも横目でチラッと見ながら素通りしてしまうのだが、今度時間のある時はじっくり聴いてみよう。
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