このレビューはネタバレを含みます
初めて岩井俊二さんの映画を観ました。
一言で言うと儚くて、苦しくて、でも美しい。
そんな作品でした。
2011年の大阪、2018年の帯広、2023年の東京、そして東日本大震災前後の石巻の4つの都市での物語がバラバラに描かれて、最後に集約されていくスタイル。
個人的に時系列バラバラな作品は今どこの時代なのか分からない事が多いけど、この作品には全くなく、分かりやすかったです。
それは、主要4人の関わり方が時系列をずらして見事に繋がっていたからではと思います。
「すずめの戸締り」以来の東日本大震災を題材にしていたが、震災の当事者のまさにあの地震が起こる様子を描いたのは見たことなかったです。
行方不明になった人、亡くなった人たちはどのように過ごしていたのか。
地震が起こって、なっちゃんと電話をつないだまま妹探すキリエがなっちゃんに対して緊急事態とは思えないような何気ない日常の延長線上のような会話。
「恋人って言ってもいい?」「何でもはいや」「じやあ、フィアンセね」。
あほな恋人ののろけ会話の用意の萌えるが、まさか、ここまでの大災害になるなんてこの時誰も思ってなかったんだろうという描写。
それが日常なんだろなぁと感じました。
最終的には結婚の約束はするが、性行為をしておいて未成年で子供ができ悩み、そして彼女が震災で行方不明に。罪悪感や葛藤といった十字架を背負ったなっちゃん。
バーのママという、水商売から逃げたくて大学を受けたのに、結局それよりもっと悪質な自分の女性性を使った結婚詐欺という行為を常習的にしていたイッコ。
詐欺されていたとなって暴走したナミダメにレイプ未遂されるキリエ(ルカ)。
3人の生い立ちが苦しくて苦しくて。
特に夏彦を演じる松村北斗さんの演技は、心を打たれるものがあった。
最後に3時間近い映画だったけど、あっという間に過ぎました。