夜

キリエのうたの夜のレビュー・感想・評価

キリエのうた(2023年製作の映画)
3.6
相変わらずの岩井俊二ワールドで魅力的な場面は多々あるんだけど、今回はどうなんだろう。後半に向けて強く疑問が残る展開だった。
主人公のアイナ・ジ・エンドが広瀬すずに翻弄されていきなり置き去りにされる不思議の国のアリス的な展開は「リップヴァンウィンクルの花嫁」にも通ずる。
震災で命を落とした姉キリエの名前を名乗って路上で歌う。姉の人生を引き継ぐかのように、姉そのものに同化するように、声を殺して自分も消したんだろう。だから、私はやっぱり小塚ルカに戻ってほしかった。生き残った人こそ自分の人生を生きてほしかった。
あとこの物語の本当の主人公は松村北斗の方だと思う。一度も守れなかった後悔とこれまでの欺瞞。弱さ。取り返しがつかないことに向き合って苦しみ続けているのは彼だからだ。
アイナ・ジ・エンドの歌パートは良かったけどさすがに多いな。役者の豪華さもあそこまでいくとノイズになる。ラストシーンのライブもこぢんまりしててあんまりカオス感がなかった。
広瀬すずの七変化も可愛かったし、TwitterでDMするのも岩井俊二っぽくていいし雪の場面は息を呑むほど美しいので良いんだけどやっぱこれ何が言いたいの!?って感じ。
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