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由宇子の天秤の夜のレビュー・感想・評価

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
4.2
事件の裏側にある真相を伝えるべく、ドキュメンタリー番組のディレクターをしている主人公由宇子。ある学校で起きたいじめ自殺事件について、警察の捜査は本当に正しかったのか、メディアの報道は正しかったのか、改めて問い直す番組を制作する。
この一つの「仕事」で手掛ける事件と、由宇子の身近で起きる事件の対比が上手い。まっすぐ全力ですべての物事に取り組むあまり、立ち止まれる余裕はどこにもい。事件関係者にインタビューを繰り返し、少しずつ心を開いてもらって少しずつ話してもらえるようになって、やっと辿り着いた真相が思っていたものと180度違ったとき、大切な誰かを傷つけるものだったとき、自分に不利益のあることだったとき、ドキュメンタリー監督として、木下由宇子という人間として、どうしたら良かったのか。自分が追い求めていたのは正義だったはずなのに。重い重い天秤を、グラグラと振り子のように揺れる天秤を、彼女一人で背負うにはあまりに辛すぎる。
全体的にソリッドな内容と演出で音楽や台詞も最小限。瀧内公美がとても良かった。
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