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こちらあみ子の夜のレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
3.7
今村夏子さんが大好きで、なかでもこの「こちらあみ子」が一番好き。かなり原作の雰囲気が出てて素晴らしいのでは。
受け取る相手のいないトランシーバーで繰り返す元気な「こちらあみ子」の声がとても悲しい。一方的で誰ともつながることが出来ない彼女を端的に表現している。基本的に人の気持ちを理解できず、執拗に何度も働きかけてしまう。タイミングや話しかける言葉を選ぶこともできない。相手の顔色も分からない。そういう"空気を読む能力"が欠如しているのだ。あれ、聞こえなかったかな?大きな声で言わないといけないかな?と、独自の解釈でグイグイと詰めて、あみ子の周囲の人たちをどんどん疲弊させていく。
二度ある同級生の坊主の少年とのシーンがどちらもとても良い。最もフラットで対等にあみ子に話しかけてる。私のどこが気持ち悪かったん?一千億個あるなら一つずつ教えてほしいと、まっすぐ尋ねるあみ子。一つも言わずに去る少年の優しさと残酷さ。後半になるにつれてあみ子の孤立が加速する。
船のシーン、おぼろげな記憶だけどホドロフスキーの「エンドレス・ポエトリー」を思い出した。ああいうファンタジー演出を入れることでだいぶキツイ現実がマイルドになる。
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