Hideko

のら犬のHidekoのレビュー・感想・評価

のら犬(2023年製作の映画)
4.2
原題: Chien de la casse
英題: Junkyard Dog

2024年 MyFFF出品作品。

南フランスの小さな村で力を持て余しながらも変わり映えのしない日々を過ごす若者たち。夜のシーンが多く、以前アルルを旅した時の見たまさにあの、小さな村の暗いライティングがまざまざと蘇って懐かしかったです。

それはさておき、老若男女問わず、人の心の機微が心を打つ作品ですね。ミラレスはどうしようもないヤツで、ドッグは彼の言いなりのこれまた自我が形成されていない若者。しかし根は善人である彼ら。自分を真っ直ぐに出す術をまだ知らないだけなんですよね。

ミラレスの過去を知ることとなり、彼の優しさの源が明らかになり、またドッグも一つの山を乗り越えていく。ミラレスの、くじを買う男性とのくだりや近所の女性との心温まるやり取り…。ベートーヴェンの『テンペスト』が美しく心に残りました。

少しの暴力シーンがありますが、静かな心の動きが感じられ、自分にとっては心落ち着くしっとりとした趣きのある作品でした。
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