RYUYA

PERFECT DAYSのRYUYAのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
俺は今生きているわけだけど、生きてきて、見落としてきたものがこの映画を観たことによって全部補給できたような気がする。日本人の美徳も愛嬌も、たまにチラリと顔を覗かせる醜悪さも、全部詰まってる。どの日本人監督よりも日本の、東京の切り取り方がうまい。それでいてシンプルで、台詞がなくて、詩情がある。やられた。この映画の全部にやられた。



・最初に劇場で予告編見た時「おいおいマジかよ、史上初のCMの映画化か?」と疑ったくらいBOSS感があったけど、あながち間違いじゃなかった

・冒頭の「ルーティーン」で早速持ってかれた。玄関で鍵とか時計を身に付けるだけなのに、これから戦いに行く殺し屋の装備のシーンみたいにかっこいいのよ

・浅草〜渋谷を舞台に絞ったのが素晴らしい。2拠点だけで「江戸からの東京」と「今の東京」を見事に描出してる

・渋谷で働いてた時期があったのと、OPPだから無駄に周辺の公衆便所把握してたので、知ってる場所めっちゃ出てきて感動した。あのトイレたち、映画撮ってもらえてほんと、良かったねと変な親心まで芽生えてます

・劇中のテレビに映るプロ野球や相撲で、香辛料みたいにサラッと日本を香り付けしてる感じとかズルくてうめぇなぁ〜

・車中や飲み屋など、映画の世界の中で流れているもの以外、音楽を一切流さない演出が映画としてカッコ良すぎ。んでそれがルー・リード、アニマルズ、パティ・スミス、ストーンズ、ニーナ・シモン、ヴェルベット、オーティス・レディング...etc.て...殺す気かよ

・車通勤(特に首都高)の方、注意した方がいいです。ヴィム・ヴェンダース監督、作中の移動シーンの全部でちっちゃくロードムービーしてきてるんで、あなたもそうなります。毎日がロードムービー

・この映画を観たら、もうトイレは汚せない。それどころか出るときキチンと三角折り。あと壁に変な紙はさむ人絶対出てくる

・出てくる役者さんのバランス、顔ぶれがおしゃれ。特に柄本時生さん、アオイヤマダさん、長井短さんあたりの人選に、監督特有のセンスを感じる。そんで大事なとこは中野有紗さん・三浦友和さんという“和”を感じる人々で...みたいな抜かりなさにシビれる

・石川さゆりさんの演技のうまさが衝撃的

・トイレ清掃の仕事をかなり詳細に描いているが、汚物などの描写は一切なし。アリガトウゴザイマス

・編集のテンポが素晴らしい。それもあり、台詞少ないのなんか全く気にならなかった。ポンポン切り替わる。同じ毎日が違って見えてくる。だからこそ最後のあのカットの長さがグッとくる。完璧すぎる

・役所さん。日本一

・この映画、10段階で言うと100
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