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PERFECT DAYSのmmmのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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公共トイレの清掃員として働く
壮年期男性の日々を描いた作品

ヴィム・ヴェンダースが日本で日本人キャストで
映画をつくるのかとちょっと楽しみにしていたのですが、
「あぁ、そうなってしまったか…」という感じでした。

黙々と仕事をこなし、同じ場所で昼食をとり、
仕事が終われば銭湯の開店時間に滑り込んで一番風呂
馴染みの店で食事と一杯
古本屋で吟味した1冊を購入し、布団に寝転がって読書し
眠気と少し格闘しながら、そっと明かりを消して寝る。

入口に几帳面に並べられた持ち物
車の中で流れる音楽(守備範囲の広さ!)
近すぎず遠すぎず、ほどほど開かれた他者との距離感

そんなありふれた日常の中のささやかなことに
喜びや美しさが宿っているのだろうなぁ
平山だけを見ていると、そう感じる。

彼がみせる涙に、この人にもなんらか過去があり、
それを秘めて生きるのかだなぁと、想い馳せる。

役所さんの眼力というか表情もよかった。
(ちょいちょい”すばらしき世界”の三上と重なるが)
喜怒哀楽とその隙間にあるもの。
言葉では説明できないもの。

光がとても印象的だった。

・・・しかし、見終えても何だか違和を拭えない。
あの奇抜なデザインの公衆トイレがそれだ。

劇中に登場するトイレは、東京都のTTTという
プロジェクトで制作されたものらしく、
渋谷区内にしか存在しない。
そのことも調べて初めて知ったが、東京にある
公衆トイレの総数に対してあまりに限定的なのに、
海外で上映されて、観客はこれが東京の
スタンダードだと勘違いしないだろうか。

「朝清掃は必ずゲロがあるから嫌」みたいな
台詞があったけど、映し出されるのはゲロどころか
既に掃除された後(なんなら設置したばかり)
みたいに綺麗なトイレばかり。
丁寧に掃除しても、経年のあれこれはあるはずなのに、
なんか、ええかっこしいというか…。

何気にこのトイレの宣伝だったりしてと
思ってしまったのでした。
(↑そもそも企画の発端はそこだったらしい
ことを後から知った)

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ニュース記事で、安倍元総理から小池都知事に
海外の映画監督が東京のトイレの映画をとりたいので
お手伝いを・・・なんてことが書かれていたし、
別のとこだと、完全なTTT関連の企画で
ヴィム・ベンダースにオファーしてるっぽい
感じとも取れるし。
監督は企画ありきで脚本書いたってことなのかなぁ。
言葉が通じない中で、完全に彼の演出なのか
関係者が企画に沿って都合よくアドバイスしたり
してたりしないのかなぁ。
(電通出身の方が共同脚本で入ってましたね…)

「へー、高速乗って毎日出勤?」とは観ていて思ったが
後からどんどん疑問が湧いてくる。

仮に利害が一致してたとしても、
その中心にあるトイレが悪目立ちしてるんだよなぁ。
少なくとも、個人的にはごく一般的にみかける
公衆トイレを掃除してたら
(企画ものでなければ)
そう見えなかった気がする。

そんなこんな、トイレの方が気になってしまって
(無論、よくないイメージとして)
なんだかごめんなさい。

とても評価がいいので、この辺りが
気になるか気にならないかが
分かれ目なのかもしれない。



◆独り言
感想見に行ったらトイレのこと
気にしてる人はあまりいなかった笑

平山が自身の生活に
過不足なく満たされることと
他者が彼の生活やおこないを
理想とすることは
イコールにならない気がする。
(その人の金銭感覚や経済状況
によって変わるんじゃないかと)

「こんなふうに生きていけたなら」
とあるが、物理的に可能であっても
素敵だと思った人は、この生活に
変えるだろうか。
無論、伝えたいのは精神性だろうが、
パーフェクト・デイズは、
細やかなことに宿る美しさであって
平山の状況として、慎ましさを
押し出して描いたのはどうしてなんだろうな…
なんて、へそまがりなことを考えている。

雰囲気はいいのに、やはりトイレが邪魔をしてしまう。
どうしたことか。。

………
区の公園(宮下公園)の役割を
かえてしまう人達が
制作にまわった作品が
謙虚な中にある美しさを
伝えることに対して
とても虚しい気持ちが
日に日に増していくので
スコア消しました。
映画は映画…とはちょっと
区別できなかったかな。
mmm

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