今年を締め括る素晴らしい作品でした。
役所広司はあまりに凄まじく、なんだかもうドキュメンタリーよりリアル。撮影場所も私の生活圏内多めで、久々に映画の中に没入してしまった。
主人公の平山。この男ほとんど話さない、最初のセリフは、作品が始まって何分後だったであろう。それなのに行動と表情によって、暖かく素敵な人なんだろうと心惹かれる。
こんなに話さなくても生活ってできるんだとなんだか発見でもあったし、私は普段、いかに無駄口ばかり叩いているんだと反省。
印象的なシーンはいくつもあったが、特に妹と再会をするシーンはやられた。トイレの清掃員を本当にやっているのかと聞く妹。
「生きる世界が違う」。そう思うことに、嫌味や見下すような気持ちも含まれているんだろうけど、それだけじゃない。悔しさとか、慈しみとか、なんだか兄を慮るような表情が堪らなかった。
そして誇らしげに頷く兄。
ああ、そうか、生活や幸せって世間や他者が決めることじゃないんだよな、自分が自分をどう思うかだった。
しかし、ラストシーンの運転席での表情にはきっと苦しみや葛藤ももちろんあって‥人は言葉に表せないほどの色んな感情に左右されながら生きていくんだなぁと、マイナスも含めての日常、だからこのタイトルなのかと感服。
歳を重ねることがなんだか楽しみだ。
