こなつ

PERFECT DAYSのこなつのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.6
今年最後の劇場鑑賞。評判通りの素晴らしい作品だった。

一人の中年男性の毎日のルーティンを追っただけなのに、ずっと惹き込まれていた。平山(役所広司)の仕事はトイレ清掃員。彼が何故この仕事をしているのか、どういう過去があるのか全くわからないのだが、彼の実直さは、仕事ぶりや人との接し方で画面越しに伝わる。スカイツリーの見える下町のアパートで代わり映えしない日々を過ごす。寡黙ではあるけれど決して孤独には見えない。

小津監督を敬愛するドイツのヴェンダース監督が映し出す美しい東京の街、公園の木漏れ日。ありきたりの日常を淡々と演じるが深みのある役所広司の演技は、さすがとしか言いようがない。植物を愛し、趣味はカメラと読書。車のカセットから聴こえる古いがセンスのある音楽、全てが魅力的に映る。

平山の背後にある生きてきた過去を、姪のリコ(中野有紗)と平山の妹(麻生祐未)の登場で薄らと感じるが、作中では何も語られない。ただその時、平山が見せた悲しい表情に底知れぬ絶望と苦しみを知った気がする。心を捉えて離さない名作に出会えた。

「THE TOKYO TOILET プロジェクト」は、16人の世界的クリエイターが参画して2020年8月を皮切りに、今年の3月西参道で17ヶ所のモダンな公共トイレが出揃った。1つの社会作りとして、「おもてなし」の心を育むことが狙いで、トレンディの街・渋谷から世界に発信している。そのプロジェクトに賛同した監督。この作品を撮るきっかけになったと言われている。渋谷と言っても、スクランブル交差点の周りにある訳ではない。渋谷区内のあちこちに点在している。会社が渋谷で自宅が渋谷の隣の品川なので、作品に出てきたトイレの中で3つは生で見ているが、実際にあのユニフォームを着ているという清掃員にはまだ会ったことがない。

入る前は外から中が透けて見え、誰もいないか綺麗かを確認でき、鍵を閉めると不透明になるガラスの壁で出来た「代々木深町の小公園トイレ」。夜は美しい行灯の様に公園を照らすらしい。ここは、近いうちに是非見に行きたいと思っているのだが、とても怖くて利用は出来そうにない。ガラスの不具合なんて絶対にないのだろうか。

今年最後のレビューになります。
一年間フォロワーの皆さんと映画を通して楽しい時が共有でき、感謝しています🙇‍♀️
皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい✨
こなつ

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