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PERFECT DAYSのmsyのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ドロップアウトのその後に、こんな生き方ができたなら…という寓話的な映画だった。TOKYO PRムービーみたいだと思ったら、そもそもTHE TOKYO TOILETプロジェクトがヴィム・ヴェンダース監督に依頼して作られた映画だそうで、なるほどってなった。キャラクターの配置といいそつなくまとまってた。長井短さんの存在も効いてました。

平山さんの寝室、はじめは何も物がないと見えたのに、だんだん引きのアングルになって物が見え始めた。ニコが来てからは一階の物置部屋が現れて、この描き方が巧みだと思った。長く生きれば全てが解決したりクリアして次に進むわけではない。こうやって蓋をした状態のものがあり、今いるところだけ片付けて生きることがある、それでもこの居場所を持てただけで尊い。平山さんが「1人じゃこなせないですよ!」って電話口で怒るところも、シンプルな感情に向き合えるようになった現在を端的に描いており、決別した過去が大企業の経営陣という個人の感情に向き合えない立場だったのだろうと思わせる、そして平山さんの人間生活リハビリが順調だと見てとれる。また木漏れ日とか影踏みを人生に重ね合わせるニュアンスはとても日本的だが、そこにアニマルズをはじめとする音楽が奥行きを出して何とも美しい世界が出来上がっていました。何より役所さんの表情は本当に良すぎる…誰もカンヌの受賞に異論あるまい。
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