やた

PERFECT DAYSのやたのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

あまり前情報を入れないようにしてるので「淡々とある男の日常が描かれる」くらいしか知らずに観た。
始まってすぐ、明け方の空を眺める役所広司の顔がアップで映って、なんて魅力的な顔なんだろうとしみじみ思った。
時間が進んでいくとともに平山という人間が少しずつこちらにもわかるようになってきて、丁寧に布団をたたんだり植物に優しく水やりしていたりとことんマメにトイレ掃除に勤しむ面もあれば、本を読みながら寝落ちしそうになったり、読みかけの本をページ開いて伏せて置いたり眼鏡のレンズ面を下にして置いたり大雑把な面もある。
ちょっと良いことがあった時は隠さずにニコニコニヤニヤしちゃうし、スカイツリーが一番良く見えるタイミングでお気に入りの歌を流し始めるこだわりがあるし、とことん無口だけど常連の銭湯や飲み屋では愛想良く挨拶する。
いいなと思ってるママには少ししゃべったりするし、姪っ子にはけっこうしゃべるし、怒る時はきちんと怒る。
あ〜"人間"を見ているなぁと思った。淡々とした日常ではあるけど、魅力的な表情と「キャラ」感のある型にはまらない生きた人間の反応に、すごく贅沢なものを見せてもらっている気持ちになった。

姪っ子や妹とのやり取りや、ママの元夫とのやり取りも、平山の今までの人生や人生観がのぞけるようで良かった。でも欲を言うとセリフがちょっと狙い過ぎかな〜とは思った。でもこういうタイプの作品として、観る側へフックを作ろうとしたんだろうな、そこは親切なのかなと感じた。

東京の景色もこうして見ると発見が多くて、先鋭的なトイレの数々も面白かったし、浅草近辺は本当に面白い。特に毎日通う浅草駅地下の飲み屋は昔からある薄暗いエリアの端っこにあって、すぐそばに新しい真っ白で煌々と照らされた別の世界があるのが、異世界の境界線のように思えた。
やた

やた