大穴

PERFECT DAYSの大穴のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.4
すごく素敵な映画だった
日本を大袈裟にアピールする事なく
ごく自然に、ある1人の男のルーティーンを
みんなで見守る

基本、ボロアパートとトイレの往復なのに
絵が持つのは、主人公が役所さんだからに他ならない

文学や洋楽が生活の一部になっており、
市井の人々に目を細め、飲み屋のママに好かれる理由もごく自然に分かり、膝を打った
これからどこのトイレもできるだけ綺麗に使おうと思ったし、近場のため、幸い聖地巡礼は簡単にできそうだ

そう思っていたのだけれど、共同脚本の人が
広告代理店の人と知って、それだけで8割くらい感動が減ってしまった

素晴らしい作品だったけど、現役の広告屋は関わっていてほしくなかった

役所さんが飲む缶コーヒーがBOSSだったので
やっぱりね、ってクスっとしたけど
それを知った後だとかなり冷める

ご本人のインタビューを読むとこう書いてあった
「始まりは、映画をつくろう!というものではなくて、本作の企画・プロデュースの柳井康治さんが中心になって取り組んでいたプロジェクト「THE TOKYO TOILET」です。これは東京・渋谷区の公共トイレを素敵にリデザインしようという試みで、実際、安藤忠雄、坂茂、隈研吾といった名だたる建築家の人たちがトイレをデザインしています。柳井さんから、そのトイレをこれからどうしていくのが正しいのか。メンテナンスひとつとっても公衆トイレの持つ課題がたくさんあって。という相談をされたんです。

最初は雑談的にいろんなアイデアを話していて、僕は広告の業界にいるので広告的な解決方法ということももちろん検討したんですけど、広告的な発想でいるとその広告がコミュニケーションしている間はいいけれど、それが終わってしまえば元に戻るような気がしたんです。そんな時にアートの力を借りてみてはどうだろうかという話になって。」

つまり、俳優がCMで特定の職業を演じ
働くって大変だけど、この世界、悪いことばっかりじゃない
コーヒー飲んで、一息つこうや

何を言いたいかというと、このコーヒーを買ってください

と同じことを役所さんにやらせて
トイレは綺麗に使ってくださいと言っていることと同じでは
そしてまんまとわたしもそう思ってしまった


ちなみに柳井氏はUNIQLOの取締役
だから衣装提供していたんだね

目的を持った映画
これは映画だけど映画じゃない

新人に死を選ばせるまで働かせていた会社の人が
労働を、規則正しい生活を肯定する映画を作ること自体に、吐き気がする。
大穴

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