まえじま

落下の解剖学のまえじまのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.4
2024年16本目。

1番後悔してるのはフランス映画協会。

アカデミー賞5部門ノミネート。だけどフランス映画協会が外国語映画賞にプッシュしたのは別の作品。無論推した映画も素晴らしいとは思うが、この映画がその賞にノミネートされてたら受賞確実だろっていうぐらい素晴らしい作品だった。

とにかく情報量を詰め込みまくった裁判劇。本当に凄まじかったし、出てくる情報によって一転二転する様に自分も傍聴席にて参加してるようだった。そして一つの言葉の文脈や言い方で真実が曲げられる裁判にて、ドイツ人の被告人がロクな通訳をつけてもらえずにフランス語で話せと言われ、判事達が聞いて判決を下す様は、そのフランス語や英語を誰かが映画用に作成した字幕を通して理解してる自分たちと同じように感じたし、自分達が観ながら思う有罪/無罪は果たして意味があるのかと考えさせられた。

そしてパルムドール賞を受賞したにしては例年よりだいぶまっすぐな映画だったなと観た後は思ったが、評論を見ていて興味深かった。弁護士や検事、そして証人たちがこうだったと思うと述べる様子、特に小説の中でこう書いてあったから〜などは完全なる主観的な意見であり、映画に隠されたメッセージ性などを過去作やあらゆる文献からこじつけする映画評論への皮肉にも見えて、そんな中自分で実証してその結果を信じることにした息子のような人を褒めるように見えた。他人に流されずに自分の信じることを根拠を持って貫き通す、その大事さを感じた。

そして終盤の「マリッジ・ストーリー」ばりの夫婦喧嘩に圧倒され、形勢逆転かと思いきやの結末。あえて真実を語らず、終わる様も見事。

監督は主演のサンドラ・ヒュラーにも実際に妻が殺ったのか殺ってないのか伝えてないとのことだから最後までどっちとも取れる演技が凄まじかった。
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