まえじま

アイアンクローのまえじまのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.7
2024年30本目。

重く苦しい鉄の爪に囚われ続ける恐ろしさ。

”呪われた一家“フォン・エリック家のお話。プロレスについて全く知識がなく予習もしなかったので、これが史実だということが信じられないし、辛すぎるし、もう一回は観たくないがしばらく心に残る作品ではある。

残された者、そして去った者、どちらにも寄り添い、どちらの苦悩もセリフでは少ないが、演者の表情で描いていて、素晴らしかった。4人兄弟、4種4様の思いがあり、その1人を描くだけでも十分重みがある話になるのだが、この史実は悲しいことにそれが連鎖的に起こる。だから観ながら「もう悪いことは起こらないでくれ…」って思って見るが現実は悲しすぎる。

対戦相手のリック・フレアーが「人生山あり谷ありの男は本当の男じゃない!」って言ってたけど男じゃなくて結構!と思うぐらいこの映画ではトキシックマスキュリニズムと家父長制を描き、父親からモラハラは受けないが、父親に認められることによって存在価値を見出す息子たちを抱き締めたくなるような映画だった。なので最後のシーンが余計沁みた。

初めてシリアスな役柄のザック・エフロンを観たが、内向的な性格のケビンを表現するために、目でその寂しさを訴えていて、思わずこちらも耐えきれなくなってしまった。アカデミー賞ノミネートされないとおかしい素晴らしい演技だったと思う。
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