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落下の解剖学のMrOwlのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.8
アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞にノミネートされており、主演のサンドラ・ヒュー(ドイツ人なのでサンドラ・フラー、サンドラ・ヒュラーがドイツ語の発音に近いのかもしれません)は主演女優賞を獲るのでは、とも言われています。また予告編ではミステリーの謎解き要素もありそうで、舞台も人里離れた雪山の山荘、というミステリー好きの好奇心を擽る(くすぐる)感じだったので、観賞してきました。確かに、サンドラ・ヒュラーの演技は素晴しかったです。中盤からの大きな変化のある展開は、見応えがありました。ただ、ミステリー、法廷もの好きとしては、ちょっと物足りない印象と、序盤の冗長な部分は、編集でテンポよくしても良かったんじゃなかと思うくらい少し退屈でした。あとは「落下の解剖学」という邦題から、検視や実験からいろいろな真実が明らかになっていく謎解きの面白さを、勝手に期待していた自分としてはそこまで期待しない方が良かったな、という作品でしたね。「解剖学」が隠喩であるとすれば、確かに、事件か事故かが判然としないこの出来事を深堀していくことで、ある夫婦と視覚障害を持つ息子の家族の姿が解剖されていくことになり、家族それぞれが秘めておきたかった出来事や想いがつまびらかになって、痛々しいほどに赤裸々な事実や想いが描かれるので、サンドラ・ヒュラー演じるザンドラに共感しても辛いし、夫の方に共感しても辛いです。その間に挟まれるダニエル君に共感すると、一番辛いかも、です。だれにでも言い分があり、それはたとえ家族でも、愛する人でも、時に愛する分だけ非難の言葉が強くなることもありますので、そうした部分を体験している人には胸にくる作品だと思います。そういう方向性の作品だ、と予め知っていたら、もっと物語に没入できたかもしれないです。先述の通り、自分はミステリー、法廷もの、解剖学てきな面白さを期待してしまったので、少しギャップを感じてしまいました。ただ、ダニエル君を演じたミロ・マシャド・グラネール君の演技も素晴らしいので、そこは観る価値ある作品だと思います。
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