Taiga

落下の解剖学のTaigaのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.3
圧巻!こりゃ面白い。

雪山のロッジ上層階から落下死した夫が、単なる事故死なのか、妻による他殺なのかを法廷で争うストーリー。
重要参考人として証言台に立ったのは、盲目の11歳の息子。
彼の証言により、法廷が覆る。

裁判の展開と共に、様々な証拠が出揃うことで人間関係が明瞭化していき、登場人物の見え方の角度がチョコチョコ変わってくる法廷ドラマらしい面白いギミック。
異議ありィ‼︎逆転裁判‼︎ってほど派手ではないから、あくまでそこ主体ではないかな。

我々も状況証拠しかない法廷を目の当たりにしながら、その人物の人となりを考察しつつストーリーを追っていくのだが、登場人物の造詣が深いので、行動原理やそれに準じた夫婦の軋轢などに説得力があり、納得のいくストーリーだった。
(作家である妻の私小説を読み解きながら、隠された夫への不満を曝け出す検察のやり方は多少強引ではあるが…。)

含みのある決着の付け方も好みで、どう思ったか、どう感じたかを人と話したくなるなぁ。






以下ネタバレな。













閉廷後のやりとりの幾つかから、妻の他殺であることが若干だが示唆されているような。

また、息子の証言で語られた、愛犬が体を壊したことは実際にあったことだが、父が「誰しもいつかいなくなる、覚悟は持った方が良い」と語った点に関しては、個人的に虚構だったんじゃないかなぁと思っています。

冒頭での事実と空想を織り交ぜた私小説スタイルについての言及。
そして小説家、言わば虚構を生み出す職である両親からのDNAを受けた息子。
上記2点から、そう思った。

空白の2日間も、決断を下す他にもエピソードを考える時間という意味があったのではないか。

まだ庇護の必要な子どもである彼が下した決断は、果たして誰が裁けるのであろうか。
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