たらお

落下の解剖学のたらおのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5
雪山の山荘で男が不可解な転落死を遂げ、真実が何なのか裁判で明らかにするお話。
これは事故なのか他殺なのか自殺なのか? 捜査で明らかになる様々な情報から謎を解き明かしていくことになります。
観客者が裁判の陪審員になった感覚で観ることが出来る一作ですね。
裁判では様々な事実が明かされ、弁護士の検事の攻防や夫婦の問題が丸裸にされていく過程をじっくりと見せつけられます。
検事の執拗な追及にはいやらしさがありますが、疑うことを仕事とする彼の役割を終始ブレずに描いていて好印象です。

現場の状況や情報から被害者の奥さんが疑われますが、彼女も秘密や癖があり、新たな事実が発覚するたびに彼女への疑いの眼差しは強くなります。
第一発見者である被害者の息子も証言台に立ちますが、彼が何を言うのか? 夫婦の内情を知っていたのか? 発言から目が離せませんでした。
まあ夫婦の内情に関してはそれぞれの意見があるでしょうが。
私は旦那さんに同情します。
作家事情については共感出来る部分がありましたので。
書けない時期や構想だけで終わってしまうことってありますからね……

作中で印象に残ったシーンとして
報道されることや裁判で触れられることは“切り取られた部分”であり“全体の一部”でしかない。
“歪められた事実”だけが広まる~などの台詞がありましたが。
弁護士の「真実がどうあれ、人がどう見るか」がすべてだ。という返答には苦々しい気持ちになりました。いや、仰ることは同意するんですけどね。
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