このレビューはネタバレを含みます
事件が起こるにあたるバックグラウンドから掘り下げていく王道ミステリー。伏線が丁寧に回収されていくので、終始ワクワクしながら鑑賞した。
一方でヒューマンドラマの色もかなり濃く、見応えのある作品。「希望の灯り」でも印象的だったザンドラヒュラーの演技が光っていた。
夫婦関係における苦悩が痛ましいほど伝わってきて、一見単純な事件に見えるがそうではないということが分かる。長尺の喧嘩シーンは見事で、緊迫感の中に漂うやるせない感じが妙にリアルだった。
裁判が終わった後のサンドラの「空っぽになった気分」といった意味のセリフが印象的。やっと勝ち取った無罪だけど、夫は戻ってこない。それに加えて、大きな傷をダニエルに与えてしまったことから来る後悔の念みたいなものが浮かぶサンドラの表情がまた絶妙。
時折挟まれるドキュメンタリー風の映像や長尺のワンカット、ダニエルが弾くピアノ曲など、引き込まれる要素が盛りだくさん。素晴らしい監督だと思った。
